詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

「潮流詩派」265号(発行編集人 麻生直子氏 潮流詩派の会 2021.4)

■「潮流詩派」265号(発行編集人 麻生直子氏 潮流詩派の会 2021.4)を拝受致しました。誠にありがとうございます。
 岡和田晃さんの詩篇「反抒情」に魂を揺さぶられています。2014年6月、JP新宿駅南口・ミロードデッキでの焼身自殺未遂事件。集団的自衛権の行使容認を批判する命がけの演説は、なんとメディアによって黙殺された。この2014年は、宮尾節子さんの「明日戦争がはじまる」が多くの人に読まれた。同じ場所で2020年1月に30代の男性がマフラーで首吊り自殺。こうした現在起きている事件から目を逸らさず、文学の想像力で対峙するのが詩の役割の一つであり、社会の動きをあらゆる視点から分析し、民意を尊重するのが民主主義の政治のはず。「抒情」とは感情を述べあらわすこと。私たちが日頃自分たちの手で殺し続けているものだ。
 山本聖子氏によるブックレビュー、P60-61「表現者たちの現在㉗足跡を見つめる ―冨岡悦子『反暴力考』を読む」、今年度の小熊秀雄賞に輝いた二冊の詩集のうちの一冊『反暴力考』(響文社)。「加害に対する根源的な問いかけを孕む詩集」「コミュニケーションという言葉では捉えきれない、関係性のひずみに〈私〉を置いている。つぶやきのような言葉からは、葛藤や無力感、弱さからのSOSが聞える」。私の住所のすぐ近くである旭川北星中学の女子生徒が凍死体で発見されました。いじめによるSOSを発し続けていたが、学校側がなかなか認めないとか、担任教師の対応の悪さ、加害者の悪気のないような発言などが、マスコミに取り上げられています。枝葉を切るのではなく、根をどうするかという対応が、求められるべきと考えます。今こそ「存在への問い」、根源的な存在の哲学をもとに、教育のあり方自体を見直さねばならない。じつはこの事件は氷山の一角で、小中高生の自殺者は減っておりません。詩集の最後に〈加害者と被害者という非人間的な対峙のなかから、はじめて一人の人間が生まれる。『人間』はつねに加害者のなかから生まれる〉という石原吉郎の言葉が問いかけとして引用されます。「閉ざされた個からふたたび世界をえぐり出すという、壮絶な作業」「ひとには見えない苦悩の、透明な足跡」を顕すこと。あまりにも多くの目が直視していない、手放されてはならない主題があります。

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