■いつも詩誌「无」(草木社)をお送りくださる、福岡の詩人・荒平太和さん。ひらがなの「ん」が「无」の草書体だということを学ばせて戴きましたが、荒平太和さんは私にとっていまだ未知の詩人です。興味を抱いておりますが非学な私には情報乏しく、荒平太和さんを御存知の方がいらっしゃいましたら、何卒ご教示賜りましたら幸いです。
荒平太和さんが3月21日に発行された新詩集『歩く魂』(草木社)を拝読させて戴いております。御出版、誠におめでとうございます!! 各作品のタイトルに漢数字のナンバーが振られており、五五篇108ページの一冊。日常の風景、幼い頃の記憶、家族のことや歴史、戦争についてなど、詩人の選ぶ主題は多岐にわたります。ユーモラスかつ独特な達観された世界の捉え方が新鮮で、「「東京へゆくな」と言っていた詩人は東京へ行った」からはじまる「一三 原点」、親しかった文学仲間の葬儀がペンネームではなく本名で行われたという、あるあるな「二四 筆名(ペンネーム)」、家、お宮、レストラン、病院といった建物としてのハコだけではなく「心」というハコにも人は行き来する「四九 ハコ」など、大変興味深く拝読させて戴きました。
表紙をめくってすぐの「まえがき」が素晴らしく、今の時代に詩を書く姿勢について、非常に大切にすべき想いが決意のように書かれているのが感動的でした。感謝をこめてここに引かせて戴きます。
「
閉塞は物理的時間を与えますが
時間を恢復させ未知の時間を発見させます。
自己を探索すればひとたび自己は失われます。
そこから新しい自己が顕れます。
この詩集でわたしはできるだけ
直観的にもの語るように心掛けています。
新しい自己が希望となり
誰かと共鳴することができれば幸いです。
これはふん虫が一年かけて転がして作った本です。
令和三年三月五日」
(まえがき 荒平太和詩集『歩く魂』(草木社))