詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■『機関精神史』第四号(2021年11月23日発行 編集人:後藤護・発行人:高山えい子)

■昨年、『機関精神史』第四号(2021年11月23日発行 編集人:後藤護・発行人:高山えい子)を、帷子耀.さんよりお送り戴きました。誠に、ありがとうございます。帷子耀.さんの詩篇「『出迷宮記』素描」、〈大胆〉な〈ダイダロス〉、神話と語彙と「蓮原春穂」という名前の謎、幽閉と脱出。深い謎の蝋で翼が編まれ鳴き聲に溶ける。
 インタビュー「ヨモタ全方位ー2010年以降を中心に・四方田犬彦」が圧巻で、何度も読み返し勉強させて戴いておりま。昨年12月12日、旭川市中央図書館で行われた講演「小熊秀雄への応答」の中で、特別講師としてご参加戴いた吉増剛造先生と、北見からご参加戴いた金石稔さん(1960年代に伝説の詩誌「騒騒」主宰)の前で、次の箇所を声に出して読ませて戴きました。「それから68年から72年くらいには、帷子さんもそうだけど、吉増剛造っていう、当時はまだ新人がいてね。エクスクラメーション・マークが詩にばんばん出てきた。今の現代詩にはビックリゲーションが出てこないんですよね。あの頃はみんなハイになっていたし、それから、『現代詩手帖』とか、『長帽子』とか、『凶区』とかが紀伊国屋書店の同人誌コーナーに置いてあると、ドーナツ盤のレコードを買うような感じでみんな買っていましたね。今は現代詩っていうと現代詩を書いている人しか読まない。現代詩を書いている人が評論するというジャンルになりつつあって、それは非常にデカダンスだと思うんだけど、あの頃は時代に遅れちゃいけない、吉増剛造緑魔子について詩を書いたぞっていったら、すぐに本屋に行って買ってくるという感じでした。だから現代詩が好きだとかそういう人じゃなくて、要するに黛ジュンがドーナツ盤出したぞとか、小川知子とか、ビートルズとかそういう感じで、『現代詩手帖』や同人雑誌を買うという時代でしたね。」…筑摩書房の『1968・2-文学』に四方田犬彦氏が書かれた次の文を想起致しておりました。「1967年に入ると、学生運動の火はいよいよ燃え盛り、佐藤首相外遊を阻止せんとする。学生たちは、羽田で熾烈な闘争を行った。山谷(さんや)と釜ヶ崎では、さらなる暴動が勃発した。中国の文化大革命はいよいよ激烈さを増し、アメリカでは大規模な黒人の異議申し立て運動が生じた。みずからを守る暴力は知性であると、マルコムXが宣言した。世界のいたるところで、抵抗のための暴力が露出していった。かくして世界は1968年に突入していった。1968年から半世紀を迎えた現在、わたしは破壊への情熱が渦巻いていたあの時期の文学のことを思い起こしている。詩が叫ばれ、短歌が詠まれ、小説が執筆された。誰もが難解にもかかわらず、いや、難解さゆえに評論や思想論を読み解き、喫茶店のなかで真剣な討議を重ねた。実験的であること、前衛的であること、そしてアンダーグラウンドであることが、文学と芸術の基準だった。」(筑摩選書『1968』四方田犬彦・福間建二編 2018年)