詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■小林坩堝氏の詩集『小松川叙景』(2021年11月20日 共和国)

■小林坩堝氏より御詩集『小松川叙景』(2021年11月20日 共和国)をご恵贈賜り、拝読させて戴いております。恐るべき書物、虚無(かれら)、誰か(かれ)、災厄(かれら)、汚染物質(われわれ)、暴風(かれ)、幻影(われわれ)、孤独(われわれ)、寒風(かれら)、真実(われわれ)、生(かれら)、不眠(われわれ)、誰か(わたし)、汚染(われわれ)、死者(かれ)、私小説(かれら)、思い出(われわれ)…磁場が狂い、時空が混濁し、錆つき偽装され、修正され、忘れられた都市の暗部へ続く「立入禁止」の空洞。
 都市の中にある辺境の文学…置き忘れられた時間が至るところに転がっているような都市そのものをえがいた安部公房の『燃えつきた地図』や『密会』に、闖入者として迷い込んだときの体験が鮮明に蘇り、「夢を叩き割ることは出来ない」(「NOWHERE」)…旧いパースペクティブの中で…夢と現実は区別されない。残酷な痛み、「愛に似た血まみれのさよなら」(「HOMEBODY」)…異形の現実のひずみで、死者(かれら)の中で生かされている。荒廃は必ず訪れる。「戦後でも戦前でもなくひたすらの事後である肉体/を瞬間の自由に放り出す」(「三月」)体験に浸っております。心より感謝申し上げます。

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