「 星 (さあ、水晶狂いしよう 1) 」
巡礼のうたごゑ祇園の夜のともしび時計の玻璃石蕗つはの花咲き
寺の庭あらたなる草木人間の道深く信じ消えにけり融けゆけり
枯れはてて哀しき木の芽に息をふきかけうつくしき川は流れ
美しき微風蒼き東京浅草夜のあかり死にしもの啼きいづる
菜種のはなは波をつくりたちまちに鳴り氷の扉ひらかれ
人人の心伸びゆけり一心に土を掘る風に砥がれて光る
かもめなぎさ波、波、哀しき波ぎんいろの蛇になる
砂山に埋め去る燐光とその哀歓指は魚針のにぶり
金のラインを空とほく引ずりて草は秋のひかり
水のほとりにたましひふかく燃えたち震はせ
血みどろに生けることつかの間に消え去り
銀の片脛十字をきる月草の藍をうち分け
飛べるもの石となり玻璃のごとく死す
霜に祈らん風もなき白昼あらし来る
きららめきつつ飛び山山雪を染め
秋松林のなかに座すうづくまり
海の青い瞳は来る渚波のむれ
静かなる空土はおとなく秋
梢はかわき水すまし離れ
ふるさとの公園芝草に
秋をまつ大根畑に雨
微かなる音をたて
寂しき哀章抱き
交し叫び凍み
朱き葉落す
立ち戻り
わが肌
明眸
神
踊りつつ涙ぐむ炎再生を思慕する踊れ詩篇に火を放ち死にゆかむ
夕陽のリズム麺麭をもとめんガラスのごとく透きとほりひびき
屋根裏より手をさしのべて円形のリズム樹は炎悪酒に浸れる
脳はくさりうつとりとうつくしく賑ひを怨ずるただひとり
寂しい心旅人のやうに憩ひ暮れ方近く煙のぼる室生犀星
感じるなんといふ微妙な霧葉の上に梢に真にかがやけ
汽車はつく雪熱い息をつく雪国の心季節のかはり目
寂しき梢を求むれば天上寂しき上野ステエシヨン
味覚を失ひ祈り求め遠方へ去る日ぐらしのこゑ
銀製の坂を下りいちめんに苔が生え手に躍る
ひややかに輝け燃えつつそそぐ九月夜の霧
空と屋根茫として綴る夜霧の並木ぬれて
街をさまよひなつはみどり熱き夏の砂
並木にすがり海をわたり青き世界よ
渾身の力輝ける街路眼もくらやみ
都に眠る眺め深く流れみなぎる
草の消えゆく大乗寺山寂しき
煙のなかはりがねのごとき
眼はひとり冬木の幹は青
煙れる冬木朱き日入る
ふたつに割れし石音
啼く水を噴く凍り
夜夜冷えまさり
無口のつぐみ
血もて血を
光のなか
暖かき
蒼空
芽