詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■富田正一さんの教え

■「おお、柴田さん、俺、あんたのこと探してたんだ、いままでどこにいたんだ?」…これが、富田正一さんが柴田へ最初にかけてくださった御言葉。2016年11月の旭川詩人クラブの集い(旭川文学資料館にて)で、初めてお会いしました。その後「青芽」の同人に加えて戴き、後継誌「フラジャイル」の創刊へ励ましてくださいました。
 戦後72年間続いた詩誌「青芽」の歴史は、昨年でようやく70周年の日本現代詩人会、日本詩人クラブより古く、1500人以上の詩人を輩出。一つの詩誌という枠を大きく超えた文化の絆を築かれました。
 九州大刀洗飛行場で、加世田市万世飛行場で、18歳の富田正一さんは特攻隊員を見送る通信兵でした。「「武運を祈るぞ」「ありがとう」戦友との別れの言葉を交わして黙祷の敬礼」(富田正一「陸軍最後の特攻基地」『老春のプロムナード』)…死地へ赴く仲間を見送らなければならなかった。富田さんの優しさ、創作の場を守り、詩人たちを応援する姿勢を貫かれたのは、戦時中の原体験があったからではないでしょうか。敗戦後、これからは心の自由の時代だ…「心の拠り所を創る」ために、詩誌を立ち上げ、名寄、旭川、道内だけでなく、全国から多くの詩人が「青芽」に参加。全力で、あの太陽のような笑顔で、詩人を応援し、励まされ、導かれた。声なき声、言葉にならない言葉を、表現の自由と平和の場を築き、守ることに情熱を傾けた。全力で誰かを応援する優しさを、心を灯す温かさを、お教え戴きました。富田さん、本当にありがとうございます。
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夢を見続けよ
呼ばれているような
叫ばれているような
夢の波長に 誰もが
手にすることの出来ない
ほのかな ひとひらの夢を
握り締めている
悠久の魂が和む
(富田正一「老いて美しく」『老春のプロムナード』)

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■旭川の詩誌「青芽」を、道内最長の戦後72年にわたって発行された富田正一さんが、4月7日に御逝去されました。

旭川の詩誌「青芽」を、道内最長の戦後72年にわたって発行された富田正一さんが、4月7日に御逝去されました。
富田正一さんは小熊秀雄と最も親しい詩友であった小池栄寿氏に師事し、戦後、名寄、旭川の文化振興に貢献され、下村保太郎氏の後継者として旭川詩人クラブの会長を長年務められました。旭川文学資料館の創立にも貢献されました。功績を称えられ、平成28年には旭川文化功労賞を受賞されました。多くの詩人を育て、「青芽」には1500人以上の詩人が関わりました。いつもあの太陽のような笑顔で私たちを励ましてくださり、「青芽」の後継詩誌「フラジャイル」の創刊に導いてくださいました。
「心の拠り所」を築くことに生涯を賭けて貢献された富田正一さんという太陽に灯され、困難な時代を生きる勇気を戴きました。ご指導戴いたことを忘れずに、富田さんにお送りする次の原稿を準備致します。富田さん、本当にありがとうございます。

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■フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021 木内ゆかさん、三冊の詩集を「出版/出産」!

■詩誌「フラジャイル」、「オオカミ」、「詩の牧場」、「阿吽通信」などなど…様々な詩誌などに作品を発表されている木内ゆかさんが、昨年12月に三冊の詩集を発行、多くの方に読まれ、注目されています。現代を映す木内さんワールド、存在の核を震わすユーモア、シネクドキー&メトニミーのセンス、一冊一冊の個性、それぞれの魅力が凝縮された作品集です。詩人・木内さんご本人からのメッセージを紹介させて戴きます。
 
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木内ゆか 詩集
『雪割りの邑』 共育舎
『カミ族の子ども』  共育舎
『気密のストロー体』  阿吽塾
 
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フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021
木内ゆかさん、詩集出版!
■昨年の十二月に薄くて小さい三冊の詩集を「出版/出産」いたしました。双子の「カミ・雪」は共育舎での自費出版、「ストロー体」は阿吽塾の懐紙シリーズに応募して「取り上げて」頂きました。すっかり春になった今改めて手に取りますと、当時の一喜一憂や拙いこだわりが伝わってきて、何とも汗ばむ「母」なのです。見守ってくださった皆様と拙い文章にお付き合いしてくださった方々に、感謝の気持ちで一杯です。(木内ゆか)

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■フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021 福士文浩さん 朗読活動記録

■朗読家、詩人・福士文浩さん(詩誌「フラジャイル」「オオカミ」同人)の今年の朗読活動の記録をまとめさせて戴きました。我らが朗読リーダー、さすが旺盛な活動です。
★お知らせ★ 6月13日(日)には札幌の「多目的喫茶店 アイビィ」(北海道立近代美術館西門向かい蔦の絡む古い建物の2F)にて、単独の朗読会も開催されるとのこと。
 ウィズ・コロナ下、小人数開催やオンライン活用など、感染予防対策徹底の上、新時代の表現の軌跡。パーティションに、時代に、聲を刻んでいます。
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フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021
福士文浩さん 朗読活動記録
1月17日(日) 札幌 
  カフェトーン オープンマイク
2月28日(日) 札幌
  カフェトーン オープンマイク
3月18日(木)
  月に開く オープンマイク
  ツイキャスによるリモート朗読会
  自宅から参加
3月20日(土) 札幌
  詩の朗読会「ぽえとる?」
3月21日(日) 札幌
  カフェトーン オープンマイク
4月4日(日) 札幌
  カフェトーン オープンマイク
4月18日(日) 札幌 
  カフェ月織堂周年祭
★ 福士文浩 単独朗読会 「光の箱」 ★
日時:6月13日(日) 18時より
場所:多目的喫茶店 アイビィ
札幌市中央区北1条西18 市田ビル 2F

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■フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021 多彩な俳人・歌人 越野誠さん(詩人・小篠真琴さん)の躍進! Ⅱ

■本日、4月11日(日)の北海道新聞《日曜文芸》に、詩人・小篠真琴さん(詩誌「フラジャイル」「指名手配」同人)の俳句が、一席に掲載されています。俳号は越野真琴さんです☆
 詩だけではなく、俳句、短歌も。多彩な小篠さんの2021年の御活躍をまとめさせて戴きました。
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■フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021
多彩な俳人歌人 越野誠さん
  (詩人・小篠真琴さん)の躍進! Ⅱ
 【俳句】              (俳号・越野真琴)
てづくりの味噌で楽しむしじみ汁     
(令和三年四月十一日 北海道新聞〈日曜文芸〉佐藤宣子氏選)
立ち寄りし春の海にて綱を引く     
(令和三年三月二十八日 北海道新聞〈日曜文芸〉佐藤宣子氏選)
二次検査安堵の食事山眠る
(令和三年一月十七日 北海道新聞〈日曜文芸〉佐藤宣子氏選)
ひざ掛けの毛玉を取りて冬休
(令和三年一月三日 北海道新聞〈日曜文芸〉佐藤宣子氏選)
 【短歌】
若さとの訣別ができ肩の荷が搭乗口へと送り出される
(令和三年三月二十一日 北海道新聞〈日曜文芸〉柳澤美晴氏選)
冷え切った事務所の空気が毛穴まで生きてる意味を問いかけている
(令和三年二月二十八日 北海道新聞〈日曜文芸〉柳澤美晴氏選)
戦争をする大人たち限界に挑む方法間違えてます
(第二十二回「隠岐後鳥羽院短歌大賞」三枝昂之氏選 佳作)

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■「追悼・渡辺宗子さんの聲」(日本詩人クラブ『詩界通信』94号 2021年4月)

日本詩人クラブ『詩界通信』94号が届きました。
渡辺宗子さんについて書かせて戴きました、
拙稿をこちらに転載させて戴きます。
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  追悼・渡辺宗子さんの聲 
                   柴田望
  「抵抗と批評の精神を詩想に最期まで書けることを祈っています。」功労顕彰への「謝辞」として「詩界通信」92号に掲載された渡辺宗子さんの御言葉。昨年6月のサッポロ・アートラボ〔サラ〕主催の鼎談「文学における普遍性と特殊性」の中でも、渡辺宗子さんは「書くときには、権力に対して挑戦していくことだ」と発言されています。このイベントを収録した詩誌「フラジャイル」10号の巻頭に、渡辺宗子さんの詩篇「雪だるまの地平線」を掲載。出来上がった詩誌は12月20日に発送致しました。21日には届いたはず…12月22日、御家族に看取られ御逝去されたと伺い、胸の張り裂ける深い空白にて、いまだ立ち直れずにおります。
 詩人・渡辺宗子さんは昭和9年4月21日福岡県生まれ。昭和55年に詩集『ああ蠣がいっぱい』で北海道詩人協会賞を受賞。永井浩氏によって「求心的な追求をもって人間の背後からその不条理性をのぞこうとしている」と激賞されました。個人誌「弦」は平成4年創刊*、最後の79号が令和3年1月に嵩文彦さん、長屋のり子さんの手によって皆様に届けられました。詩誌の活動の使命は、有名な方の寄稿を戴くことや、詩のグループ間の争いなどではなく、真の創作の場を拓くことであるとお教えくださいました。文学のイベントでいつもお会いし、「あなた、仕事があるんでしょう、こんなことばかりして…」と心配して叱ってくださったこと、宗子さんの朗読の後ろでピアノを弾いたこと、前述の6月も隣の御席で「ほら、あなたも発言しなさい!」と背を押してくださったこと、宗子さんの御聲を忘れません。「地霊の抵抗」と感謝をいつも胸に。
(『詩界通信』94号 2021年4月 日本詩人クラブ
*「個人誌「弦」は昭和43年創刊、6号までを発行。その後平成4年より再び1号から継続され、…」と初出『詩界通信』稿には書いており、資料調査時の記録等から、当初そのように認識していたのですが、北海道文学館で実物を見たところ、昭和43年創刊の「弦」は、本田錦一郎氏らによる小説・戯曲・詩などの総合文芸同人誌でありました。2019年3月30日、高橋秀明さんが講演された「北海道横超忌Ⅱ」の後、倉敷コーヒーで渡辺宗子さんがその「弦」のお話をされていましたこと、今更ながら憶いだしました(そのときもお隣の席でした)。誠に申し訳ございません。この場を借りて訂正させて戴きます。
YouTubeにて朗読の動画をご覧戴けます。
詩劇「洪水伝説(稽古篇)」+ポエーマンズ 渡辺宗子さん 札幌20190831
渡辺宗子さん「胡桃」《第2回 ぽえむ・ライヴin豊平館》20190525
渡辺宗子さん「椿哀悼 」「第1回 ぽえむ・ライヴin豊平館」20180428

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■小樽詩話会会報 第634号(2021年4月) 「楯(十字架)」  柴田望 

■小樽詩話会会報 第634号(2021年4月)

50年後、100年後の未来、今の私たちの行動はどう評価されるか?
その時の力ある者の都合で、過去の評価は捻じ曲げられるのか?
「その後にやってくる未来が、辿ってきた過去の評価を決める。」(佐治晴夫)
一秒前の過去でさえ完全に再現することはできない。
証人として現在の空気を生きることができる奇蹟への感謝と、
尊敬する界兀歩さんの、極めて熱量の高い一言一句の判断の軌跡、時を超えて響く凄まじい非常時の聲、『非ぐる日』への敬意をこめて。

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楯(十字架)  柴田望
*
……感………のう…のう……能………して……いきむ……うみ……だして
………染…………膿……化…可……同……どう………々…して…々……く

界兀歩「か」『非ぐる日』(旭図書刊行センター2002年8月)
いまは正しくてもやがて過ちであったその繰り返しがじんるい
しんけんであればあるほど将来戯画化…オモシロオカシク
遺伝子解読されていない迷信映画化批評
ベラ・ルゴシ主演『魔人ドラキュラ』(1931年)
弱点はトリカブト木の杭十字架陽の光
(マ…ス…ク消…毒手洗い体温計)
ヴァンパイアvampireは代表的なアンデッドTheUn-Dead
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)は
アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録
ニューヨーク近代美術館でも上映されている
噛むことによって感染させ…仲間を増やす生ける屍
破壊された肉体が…荒れはてた街を徘徊…

ナゼ統制がとれており何度でも立ち上がるノカ?
黒い大統領フェラ・クティは「ZOMBIE」を演奏して
ナイジェリアの軍事政権を痛烈にオモシロオカシク批判した
「命令者がいなければ何もできない動けない
まっすぐ進め殺せと命じろ脳みそカラッポ
ジョロ・ジャラ・ジョロ(左へ、右へ、左へ)…」
FelaKutiZombieKnittingFactory,1976.

(そうか、破壊された肉体が…焦土を歩くイメージは
兵士たちや…民間人の犠牲から来たのではないか?
戦争が表現されていたのではないか?
観客を怯えさせるのは特殊メイクではなく、戦争の記憶…)

ロバート・キャパがとらえた「丸刈りの女性」ドイツが敗れ
二万人ものフランス女性がナチ協力者として見せしめにされた
つよい側が正しいつよい側がよわくなれば正しさは変わる
(…間違いだった残酷だった製薬会社がとにかく儲けた
ウイルスに感染された方を差別してゾンビ扱いして…
うわ、昔の常識ってやばいね…正しさが過ちであった
その繰り返し鉤十字の丸刈り果てしなくぐるぐる…)

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