詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

嵩文彦さんの『「明日の王」詩と評論』(未知谷)・個人誌『麓ROKU』創刊第2・3号

■嵩文彦さんの『「明日の王」詩と評論』(未知谷)の出版祝賀会が3月24日(吉本隆明の北海道横超忌の日の夜)に、ホテルさっぽろ芸文館の1階で、細田傳造さんの詩集『アジュモニの家』(思潮社)の祝賀会と同時に行われて、そこに私たちフラジャイルメンバーは参加させて戴いたのでした。
4月8日の北海道新聞に山田航さんの書評で「嵩が書き下ろしたエッセーは、十勝の文学青年たちの熱い青春記として読み継がれていってほしいくらいの出来である」と熱く書かれていた『明日の王』は、もともとは画家片山健さんのリトグラフ10葉と、嵩文彦さんの詩10篇による、1冊なんと9万円もする豪華本であったとのこと。どんな絵と響き合っていたのかがとても気になる詩のテキストですが、この本では故草森伸一さんの評論と見事に響き合っています。草森さんの評の進め方、謎解きのようで、多層的に作品の神話性を浮き彫りにしていきます。そもそもこの評論の発見のされ方自体がミステリアス。評論家の遺稿から、草森さんという方が詩人・嵩文彦さんの作品をこんなに楽しく読んで、さらなる活躍をこんなに楽しみにしていたのか、という熱いものがこみあげてきます。
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■『明日の王』の序盤は緑のイメージ、「大地を緑にそめて/キャベツが増殖する」「深い緑の藻が繁茂している川」…先日発行された渡辺宗子さんの『弦』に嵩文彦さんが寄稿された詩も緑です。「ガラスの家のなかに緑の雨のまっすぐな降りがあります。」(「のびやかな雨脚」)。「眼窩の深奥から緑の雨があふれます」という詩句で、戴いた個人誌「麓ROKU」創刊2号の表紙の絵を覗きこみ…創刊2号の詩作品「ながれはてゆく血」は血の赤のイメージ、同じく創刊3号の詩作品「白いおおきな雲」は白のイメージ。色がだんだん音や形や味を伴い、感情や性格や生理的な要素を帯びていき、哲学を獲得していく。サイケデリックな、絵画の迷路でもあります。
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■「麓ROKU」を拝読させて戴き、冒頭に俳句、次に現代詩、エッセイと嵩文彦さんの魅力たっぷりの豪華な個人誌で、創刊2号では有島武郎のこと、伊福部昭の音楽のこと、創刊3号では敦賀へ行かれたレポート、俳句のこと、札幌座の「フレップの花、咲く頃に」芝居のこと等、話題盛りだくさん。ものすごく、勉強になります。北原白秋樺太の問題について、『フレップ・トリップ』では深く触れなかったこと…、詳細が語られる(という予告がされている!)次号が楽しみでなりません。
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2018-06-10.

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