詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

奥間埜乃さんの『さよなら、ほう、アウルわたしの水』(書肆山田、2019年2月)

■前述の通り、まったく本を読む時間が無い中でも、この4月、二宮金次郎のごとく徒歩での通勤中ずっと向き合わせて戴いた、奥間埜乃さんの『さよなら、ほう、アウルわたしの水』(書肆山田、2019年2月)、何度も心地よくイメージを繋ぎ、自分がいかに日頃の生活の中で沢山のミクロな出来事を見落としているかに気づかされ、短い一瞬の中でも膨大に存在するはずの語や感覚に蓋をしてしまっているか、驚かされております。言語のもつ波動の広がりに「、」の足音を立てる。「、」で区切られた一つ一つの言葉から広がる波動、「、」の雫が水面に落ちる時の波動が紙面をはみ出す映像をじっくり聴きながら、この詩集を読む時のようにひとの言葉に耳を傾けることができたらいいのにと希い、多くの出会いに恵まれた雪解けの春。何故かデペッシュ・モードばかり聴いていた。無機物は決して無機質ではない、この宇宙に存在する全ては振動している、その揺れの波動が跳ね返る言語コミュニケーション。歩く、または水が落ちる速度の原理のダンスだから。 「やるせなさ、虚しさ、絶望、明滅するすべてが見え、大きな口を開き、ひと思いに呑み込んでいく」「[わたし]は[わたし]の輪郭をなぞる」(「痕跡 d」)。

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さよなら、ほう、アウルわたしの水

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