詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

橋場仁奈さん 詩集『半球形』

■橋場仁奈さんより、御詩集『半球形』をお送り賜りました。心より御礼申し上げます。
 旭川の私たちにとっては「青芽」の先輩詩人、天才橋場さんにしか書けない文体、各作品の主人公、子熊、てんとう虫、仔猫、牛、らんぷ、けむし、皿、砂、右腕、いっぽんの木、6歳の「ゆうり」ちゃん、にスポットが当てられる、たぶんこの詩集を読むであろう読者に近い人物はあまり登場しない。それなのに読者に共感できる経験や感情を追体験させる不思議な詩群、どれも読者に向けられた会話体なのに一方的ではない、寄せては返す、どこから読んでも全体と繋がっている。助詞に紡がれた名詞や動詞の繰り返しで丹念にえがかれる催眠術的手法?、一本の木が根から成長し枝分かれしていく、ライフ・オブ・ツリーが、小さな甲虫類の半球体に収められた荘厳な宇宙が、みるみる形成されていく壮絶な奇跡の過程。とにかく凄まじく、このように書くことは自分にはできないです。詩誌「まどえふ」で拝読した「銃声」のハンターにとっての子熊は、自分の過去にもいたのではないか、もしかしてこれからもそういう存在をつくってしまうのではないか・・・胸の締めつけられる作品。「袋をかぶせた檻に閉じこめて川の向こうに捨ててきた/その記憶のためにそのひとときの記憶のために/やさしいハンターは今日も引き金を引く」(「銃声」)

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半球形 橋場仁奈さん御詩集