詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■細田傳造さんの詩集『みちゆき』(書肆山田 2019年5月)

細田傳造さんの詩集『みちゆき』(書肆山田 2019年5月)を拝読、愛読中。

 20ページ「童女」に瞠目、嫌われて無口になるのにも、許されておしゃべりになるのにも、生まれてくるのにも、ちいさなおじぎをしてすれちがうのにも、バスに乗るのにも、それぞれの用途と由来を持つ鍵が存在するのかもしれないと思いました。しかし鍵は七つしかない、七つ目が金色である。童女と近所のおじいさんが同じ鍵を見つめている。いま自分の手元にはいくつの鍵があるのか、今日も幾つかの鍵を携え、出会い多き業務に専念したいと思います。童女のような女性に会うかもしれませんし。

 「あたらしい五月が来たので/ヒース峠に樽絵夫人とことしの山躑躅を見に行く」今年の五月は猛暑です! 小誌『フラジャイル』第2号(2018年3月号)冒頭に掲載させて戴いた御作品「タルマエ」も収録されている。昨年3月24日に細田傳造さんの『アジュモニの家』と嵩文彦さんの『明日の王』合同出版祝賀会がホテルさっぽろ芸文館で行われ、そのとき僭越ながらご本人の前で、震えつつ朗読させて戴きました。


タルマエ山は雲の中 百合の球根は籠の中
わが陽根にさみだれ
ちいさき粒の降りかかる……
戦いすんだ日が暮れた
矛を収めよ
川蟹の
わが尻裏でちいさく言うめり

(「タルマエ」)

f:id:loureeds:20190601212947j:plain

みちゆき 細田傳造