詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

「POISSON」第四十五章!

■渡会やよひさんより、「POISSON」第四十五章(編集・発行 森谷敬 2019・9)をお送り賜り、都市の忘れられた景色を照射する渡会やよひさんの「点景」の「それから大きなショベルが地面を掘り起こし/土はいっときたけだけしくにおった」という詩句に、たけだけしい匂いとは、気が付けば消えているもの、「(あれは/(いつのことだったろう…/(マゼラン大星雲が天の川銀河と衝突し…」記憶には残されていく情景を想いうかべております、人の居る情景、居ない情景。
 法橋太郎さんの「孤独な戦士―F・A氏に」を鑑賞。「それでもこの世を生き抜くためには孤独な闘いがある。/ひとが外から見ても分からない戦いだ。/ひとなかでは陽気に振舞っていても家に帰りしばらくひとりでいると誰にでも分かる。/おれたちはそれぞれが孤独な戦士でなくてなんだろう。/誰が本当におれを理解してくれるんだろうと。/ひとまえでは見せたことのない涙がこぼれる。」という詩句に感銘を受け、今まで巻き込まれた数々の戦いを想起致しておりました。「空き家が解体されてしばらく経つとマンションが組み立てられる。」都市の抒情、戦士の心情、見事に織り合わせられていくよう。
 「そのむなしさは、人々の感動の実話にさえひたひたと染みこんでいくようだ。」川島洋氏の論考「一つの憂鬱について」に非常に勇気づけられました。「私から何ひとつ手渡せる「価値」がない。」その「価値」とは資本主義社会の定義する「価値」にすぎないのであれば、「欠如」のほうへ向かうことも当然心の仕組みであり、両方がなければ成り立たないと思いました。

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