詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「Nemesis」第2号!!

■「Nemesis」第2号を御恵贈戴きました。誠にありがとうございます。寄稿詩に伊藤菜乃香さん(「フラジャイル」同人!)による「猫のクロ」。クロがいた日々のこと。「私たちと/猫の一生が交差するとき」。思い返すと短かったお互いの役割。今生で出会い、報われなくても、無視されても構わない、一時は通い合ったかもしれない愛に、「時に迷いながら/選び/生きた」、彼女(=クロ)なりの選択に理解を示す詩人の優しいまなざし。
 青木由弥子さんの論考「「白」の衝迫―伊藤静雄を巡る断想(1)」とても興味深く拝読させて戴きました。中村武三郎の『白の侵入』について。この時代に書かれた「白」という詩句の想像力について。確か伊藤静雄の『詩集夏花』の「決心」という作品は中村武三郎に捧げられていたのではないかと記憶しております。資料を調べながら、何度も読ませて戴きます。
 添田馨氏による「植物革命説―香港・二〇一九/革命の新しい地平へ」も非常に興味深く、”植物的”な戦いとは何か? 「中央に一つの指令センターをもつ動物とは違って、根端一本一本が微小な無数の指令センターとなり、前線をつくっている。」(本文中引用ステファノ・マンクーゾ『植物は〈未来〉を知っている。』) 昨年、大規模な市民デモがあったのは香港だけではない。現在、コロナウィルスで悲惨な状況となっている武漢では、2019年6~7月、深刻な大気汚染と廃棄発電所計画に反対する1万人以上の市民が抗議デモに参加し、警察と衝突しています。1000人規模の機動隊が出動。デモに参加した人々に対し暴力を振るうシーンが撮影された。報道は統制されていたが、インターネットを通じて武漢の市民も香港での運動を知っていた。現在は鎮静化されてしまったように見える”植物的”戦いはこれからどう展開されるのか。今年5月には、北海道旭川市中央図書館にて、旭川開村130年記念イベントの一環として、東鷹栖安部公房の会による安部公房資料の展示や、代表的短編「デンドロカカリヤ」の朗読を予定しております。「デンドロカカリヤ」は人間(コモン君)が植物になってしまうという変形譚です。世界の中の自分の変形、自分の中の世界の変形、日常の変形。安部公房作品の主人公はなぜ動物ではなく植物への変形を課せられたのかを考えつつ、本論「植物革命説」をじっくり研究させて戴きたいと思っております。貴重な勉強の機会を賜り、心より感謝申し上げます。

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