詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■木村孝夫さんの新詩集『十年鍋』(モノクローム・プロジェクト 2022年3月11日)

■木村孝夫さんの新詩集『十年鍋』(モノクローム・プロジェクト 2022年3月11日)の各詩篇を拝読させて戴き、「落ちている言葉は/十年前の言葉だ/まだ化石にさせるわけには行かない」(「視る」)、地球全体が円周率の外へ弾かれたような大変な悲しみや痛みにじかに触れるような衝撃。現場の匂いや、魂の犇めきや、土を握った感触が、決して風化することのないリアルさで胸に迫ってくるようです。P66「牛の慰霊碑」の「柱をかじりながら/飼い主を何日も呼び続けながら/餓死していった牛もいた」詩行から、昨年2月28日の北海道新聞に掲載されていた岩本茂之氏の記事(耳を澄ませば「ぼろぼろの写真を胸に」)を想起致しておりました。福島県立博物館「震災遺産を考える」展で展示された柱のレプリカ。飢えた牛がかじった半杭牧場の柱。原発が次々爆発し、牛を置いて避難せざるを得なかった。福島県全体で被害は1万8千頭を超えた…。P26「悔いが酸化する」にある「ときどき逆流してくるあの日」は、何も終わってない。十年後の今も長い道のりの途中であると思い知らされます。

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