詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■美しい装丁の第一詩集、角野裕美さんの『ちゃうんちゃいます?』(土曜美術社販売出版)

■美しい装丁の第一詩集、角野裕美さんの『ちゃうんちゃいます?』(土曜美術社販売出版)を昨年から何度か拝読させて戴いております。誠にありがとうございます。
 北海道に住む私は、「ちゃうんちゃいます?」と言われたことも言ったこともありません。解読できない、謎の多い、素敵な言葉です。「ちゃう」とは「ちがう」という意味だと思うのですが、それが繰り返され、「ます」という丁寧語かと思いきや、疑問形へ一瞬で変化を遂げる。もし言われたら、ドキドキしてしまうと思います。「あれ、ちゃうちゃうちゃう?」「いや、ちゃうちゃうちゃうんちゃう?」とか、使い慣れている方にとっては言語は潜在意識に浸透されている技術ですから、日常語なのかもしれませんが、そうでない人にとっては分からない。分からないけれど知識としては知っている、テレビでは聴いたことがあるけれど、遠い昔から使われていた言葉が少しずつ変化していったような…普通会話のふりをした呪文のよう。「かなんな」も魅力的な言葉。顕在意識で読める言葉を用いながら、潜在意識への通路を拓き、とんでもない次元へ詩は導く。
 詩篇「ちゃうんちゃいます?」(P38)では、詩人の思考に触れることができるような錯覚を覚えます。あの時言い返せばよかった、、、みたいな感じでしょうか。「イヤなことを/ズバッとでもなく遠回しでもなく/身体の斜め上から/切り込んでくる感じで/上手いわな/いつの間にやらシュッて切られてる/じんわり痛い傷を負わしてくるわ」なるほど、じくじく痛みます。
 しかし、こういう痛みを与える人は、誰にでも同じような接し方をするので、後で痛い目に遭うでしょう。世の中は何も言い返せない人ばかりではないのです。気にしない人もいるでしょうが、このやろう!と徹底的にやり返す人もいるのです。他人とは自分の鏡。人を不機嫌にさせるということは、波動の低さです。付き合うことはありません。いい経験をさせてくれてありがとう、と、笑顔で太陽の中へ手放し、こっちは高い波動で生きればいいのです。「今度いっぺん言うてみたろ」とやり返すのではなく、老子のごとく《理性的ではない相手に対しても理性的に対応する》、大人の対応でそっとしておけば敵は自滅しますよ、とか、読者として主人公に味方したくなってしまう、実質感の深い読書体験。素敵な御本です。誠にありがとうございます。

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