詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「ファントム」6号(発行 為平澪氏 「ファントム」編集室)

■詩誌「ファントム」6号(発行 為平澪氏 「ファントム」編集室)を拝読させて戴きました。詩人の息吹が感じられるような、一篇一篇の存在感。詩が大切に収められている、詩誌の理想形にて、目標にしたいと私がいつも考えている素晴らしい詩誌です。毎号、貴重な勉強をさせて戴いております。
 巻頭に小林坩堝さんの「記念日に」。「われわれの敵など何処にもいない/われわれはわれわれであり続ける為めに敵を探し/合わせ鏡の無間地獄/そのたびにわれわれの憎悪が増殖していく」という厳しい詩語で、ミサイルと制裁、世界が「敵」を創出し増殖させる情況下に「日付が語らなかったもの」を信じたいと詩の言葉で希う。
 石川敬大さんの詩篇「聴雨と羽化」は、詩作の実況のような傑作。「聴こえない無音」の「雨音」や「聴きとれない蛾の羽音」に耳を傾け、「沸点に達して転調」させ、「宙吊りの行間で透水の推敲を重ね塗り」し、指から裂けて「変態」する。詩を何度も何度も失敗しながら諦めず推敲し続ける一人の詩作者としてこの詩篇に勇気づけられ、「変態」を決意致しております。
 福島泰樹氏、一色真理氏、大谷征矢氏が1965~66年の早大闘争《27号室》について、現場の声や熱度をリアルを届けるようなとても貴重なエッセイ・証言を寄稿されています。これを読み、福島泰樹氏の絶叫短歌のコンサートを学生の頃、90年代に旭川市民文化会館の大ホールで観たことを憶いだし、頭脳警察のドラムの石塚氏とご一緒の演奏で、あの魂の底から発せられるような絶叫は1965~66年のこうした時代を通過した聲だったのかという気づきと、昨年発行された田中綾先生の『書棚から歌を二〇一五‐二〇二〇』(しまふくろう新書)に紹介されていた福島氏の短歌「奇麗に生き幸福を噛み死んでいった戦う故に君らは往った」の「戦う故に」という言葉が与えてくる意味の深みも変わってくるような気がしております。峻烈な文学的戦い。「半世紀前、言葉がリアルに血と汗を流していた時代」(「ファントム」6号「編集を終えて」より)。

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