詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■北海道詩人協会会報「北海道詩人」No.149(2020年12月15日発行)に、「第57回(2019年度)北海道詩人協会賞」受賞の言葉

■北海道詩人協会会報「北海道詩人」No.149(2020年12月15日発行)に、「第57回(2019年度)北海道詩人協会賞」受賞ということで、尊敬する本庄英雄さんとともに、柴田の受賞の言葉を掲載戴いております。各選考委員の皆様の選評も、恐縮しつつ拝読させて戴きました。コロナ禍にて対面ではなく書面協議であったとのこと、拙作に「未来へ届く多様性」「地球や宇宙への対峙、時代に対する鋭利な視点」という身に余る御言葉を戴いており、心より感謝申し上げます。
 会報冒頭に「コロナ禍の中で~今できることを~」村田譲会長の「今しかないこの時間、今できることを行うというシンプルさが必要」という御言葉、その重要さは詩の活動だけではなく、創作についても言えることではないかと深く考えさせられました。
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 受賞の言葉   柴田望
 新型コロナのファースト・インパクトの渦中、二十二歳の女子プロレスラーが亡くなられました。死の直前まで、毎日百件以上もの誹謗が彼女のもとへ送られていました。デジタル革命時に二十二歳で上司と恋に落ち、世界初の「ネットいじめ」を世界規模で受けた女性のこと(アメリカが大統領を引きずり下ろすために行ったこと)、大きな物語のためのあらゆる犠牲を想起致します。「なぜ人は残酷なのだろう」が「そもそも人は残酷なのだ」へ変わる表現を試み(安部公房砂の女』の「砂が流動しているのではなく、実は流動そのものが砂なのだ」を起点に)、題材ごとに想定外の形式が自分以外の力によって定められるような経験の中で、もっと過去を学び、未来と向き合わなければならず、己の未熟さを感じることばかりであります。先日、富田正一さんのお宅で昭和六年の「北海道詩集」を拝見致しました。小熊秀雄支部沈黙、鈴木政輝、加藤愛夫…今読んでも古さを感じさせない詩群のとてつもない煌めき。岩見沢出身の私は加藤愛夫作詩の「交響詩岩見沢」を歌って育ちました。来年の旭川市民劇では、今野大力役の木暮純さんとともに、鈴木政輝役として出演致します。北海道の詩の歴史の脈に生きられる喜びを次世代へ大切に運ぶ荷札として詩誌を「フラジャイル」と名付けました。此の度身に余る賞を賜り、誠に畏れ多く、身の引き締まる思いです。北海道詩人協会に入会させて戴き、朗読会やイベント等で多くを学ばせて戴き、尊敬する皆様より貴重な御指導や激励を賜りましたすべてそのおかげと存じております。詩を学び続けます。心より感謝申し上げます。

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■「 海岸線 」(若宮明彦詩論集『波打ち際の詩想を歩く』(文化企画アオサギ)を読んで) 柴田望 詩誌「フラジャイル」(2021年1月1日発行 10号記念&3周年記念号)

旭川の詩誌「フラジャイル」(2021年1月1日発行 10号記念&3周年記念号)に、「海岸線」という作品を載せました。
 フランスのエレクトロ・デュオ、ダフト・パンクが2013年に発表した「Random Access Memories」は、ナイル・ロジャースジョルジオ・モロダー、オマー・ハキムといった偉大な先達の素晴らしさにスポットを当てる、音楽への愛に満ちた仕事でした。小篠真琴さんや柴田と同世代のダフト・パンクが行った、先輩アーティストたちへのリスペクトを表明するような仕事を、詩ではどのように行うことができるかを考えたとき、20代の学生時代に若宮明彦先生の詩集『貝殻幻想』(土曜美術社出版販売)に出会ったときの感動を素直に書くことを思いつきました。
 なぜ感動したのか……そのときの自分の状況は、海岸線の、波打ち際のようなところだったのかもしれません。1990年代後半の状況の中で、純粋に、垂直に立ち上がる詩行として感覚したときの気持ちを、僭越ながら「遠い宇宙の言葉を初めて聴いたときのように/孤独や痛みが雪の結晶のごとく行間に消えた」と表しました。海の町に住んでいた祖父の葬儀を終えて、一人で海岸で漂着物を眺めて過ごした時間を思い出しました。生と死が海にはあります。しばらく忘れていたことでした。文化企画アオサギより6月に発行された詩論集『波打ち際の詩想を歩く』を読ませて戴いたのが記憶を蘇らせたきっかけです。ありがとうございます。詩の《投壜》が、心の渚に届いたことを、一作一作、若宮先生が丁寧に書かれていることに感激しました。海岸線、波打ち際とは書き手と読み手との境でもあるのでしょうか。1997年と1998年に、若宮先生の紡ぎ出す詩想が、当時旭川の学生だった一人の読者の心の渚に、温かい不思議な波として届いていたことをお伝えしたくて書きました。
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「 海岸線 」     柴田望
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   若宮明彦詩論集『波打ち際の詩想を歩く』(文化企画アオサギ)を読み 「海岸線が急速に失われつつある」という 何故か? 高層ビルを建てるために 砂が違法な組織によって世界中の海岸から盗まれ 高値で売られている 2・3仲通り地下二階のショットバーで働いていた 一九九七年 コンクリートの壁じゅう蛍光のキース・へリング MTVから流れるレディオヘッドの『OKコンピューター』 ケミカル・ブラザーズプロディジーダフト・パンク等のデジタル音 デヴィッド・ボウイもジャングル・ビート仕様 既成の解体を強いられ、まさにアヴァン・ポップ全盛 詩の雑誌も前衛または実験の奔流(前衛と実験は異なる) どう生きるべきか ポストモダン以前か以後か カクテルのレシピを憶え ピザの生地にスイカのエキスが入ったメニューが好きでした 年末、岩見沢に帰省 気晴らしに国道の上野書店へ カウンターに一冊の本がポップ付きで置かれていた 『叢書新世代の詩人たち24・貝殻幻想・若宮明彦詩集』(土曜美術社出版販売) 《岩見沢在住の著者による詩集、第三十五回北海道詩人協会受賞作!》 巻き貝の表紙を導かれるように開く
 「 海霧のように流れる
   一房のかなしみを
   こころの水平線から
   そっともいでしまいたい 」(「海洋性」)
                  文字を眺めて聴こえてくる音に耳を澄ませた 遠い宇宙の言葉を初めて聴いたときのように 孤独や痛みが雪の結晶のごとく行間に消えた 意味の繫がらない言葉や記号の配置ではない でも新しいと直感で判る 一月のガーネットから十二月のトルコ石まで 言葉を誕生石に変える不思議な錬金術の暦 博物学者の恋、「ブラキストン線」 海の詩も石の詩も貝殻の詩も血が通っており 人と人との関わりについて書かれているように思えた 海岸線を彷徨っていた 深夜、店が終わって (今はどこへ消えたのか?)ホームレスの眠る駅で 朝焼けの始発を待ち 単位がきっと足りなくて卒業できるか不安だった 長い距離をドライブして各地で演奏しながら 少しずつ音を掴んだバンドを解散させた 将来を約束した彼女は瀋陽へ帰り 日本へ呼ぶためのお金を送りたかった 一九九八年 ついこのまえ笑顔だった虻田の祖父が亡くなり 祖父の家で葬儀は行われた 家族葬のはずが大勢の賑わいをよそに 一人で海岸へ行き 漂着物を眺めていた 祖父の声が聴こえた 「お前くらいの頃、柔道の技が決まる夢を見た。やりたいことがあるなら夢に出るほどやるべきだ。」 詩に夢中というわけではなかったけれど 『核詩集1998年版』(核の会) 後ろのページをめくったとき… あ、あの詩人だ!
 「 打ちよせるものより
    遠ざかるものに
    ふと目頭が熱くなるのは
    どんな因果によるものなのか 」(「海辺にて」)
                若宮明彦詩論集『波打ち際の詩想を歩く』(文化企画アオサギ) 序文「波打ち際の詩想」を読み 何も考えられないくらい 詩人の密かなファンとなった学生時代の記憶が噴きだし かつては《北海道の詩》の本が数多く発行されていたけれど 北海道の視点から詩を語る論も今はあまり見かけず 日本の 世界の 波打ち際から何が急速に失われたのか 樺太師範を卒業の後 身を現人神にささげ 南冥北漠の地に散らさんと 土浦海軍航空隊 神龍特別攻撃隊員拝命 グライダー訓練中に玉音放送を聴いた少年の祖父と 引揚船に乗せてもらえず 軍艦で海境(うなざか)を渡り… 潜水艦に攻撃されず 命拾いした祖母たちの 二度と帰ることのできなかった故郷 波打ち際をこれから辿る
※若宮明彦詩論集『波打ち際の詩想を歩く』(文化企画アオサギ 二〇二〇年六月一二日)

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■杉中昌樹さんが発行される「映画+詩 影・えれくとりっく」Vol.8に・・・

■杉中昌樹さんが発行される「映画+詩 影・えれくとりっく」Vol.8に、拙詩「壁 -雨のシーン」を掲載戴いております。誠にありがとうございます。映画のことについての寄稿という御依頼を承り、新海誠監督の『天気の子』を鑑賞し、安部公房作品の影を感じたということを書かせて戴きましたが……、1連目「大切な人の想いが詰まった品を天に返す日」、立花冨美宅のシーンで行われたのは旦那さんの初盆の「迎え火」であったのに、品物を供養する「お焚き上げ」だと勘違いして書いてしまったように思えます。校正で気づかなかった…記憶で書いてしまった反省です。次に発表の機会には、「大切な人へ迎え火を焚く日」と改めてみます。
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「 壁  ― 雨のシーン 」
雨のシーンが美しい… 大切な日 例えば運動会 花火大会 大切な人へ迎え火を焚く日 少女が祈れば、短時間、局地的だが確実に雲間から光がさす 笑顔でいっぱいになる お客さんに感謝されて、役割を知る 行方不明の少年は秘密を知る 少女が仕事を終えるたび 代償として体が(空のように)透き通っていく…
映画館の座席で 懐かしい登場人物たちの記憶が一気に噴きだす コモン君 アルゴン君 棒になった男 S・カルマ氏… 変わっていく自分・拒絶する自分 人間が自己変革の新しい拠点を創るために 幾何学の《補助線》を引く 強制された現代の連帯性を変革する
スクリーンが経験させる 世界の変化・変形 世界の中の自分の変化・変形 自分の中の世界の変化・変形… 新海誠監督『天気の子』を観た2019年、原因不明な肺炎が発見、報告された 翌3月には「pandemic」に至っていると認識され 同時に「infodemic」が常態化した 世界各国が緊急事態であると認識し、国民に対する行動制限を行った
(《私》の変形が、ふたたび始まっている、といわなければならない。戦後の《私》は、無から、出発した。それは、無の意識を軟体化しようとする伝統的情念と戦いつつ、基盤をきりひらいてきた。その戦いは、神を呼びつつ、そのものによってみずからを呪縛していき、ついに植物的存在へ退行してしまう道を、遮断することだった。自己救済から神へとむかい、奴隷の虚弱な人格のうちに収斂されていく《私の頽廃》を、そういう自己欺満を、破砕することだった。それゆえに、自己救済の願望によって逆に壁の中に塗りこめられてしまうような意識のありかたが、否定されなければならない。)
高野斗志美安部公房論』1971年)
※pandemic = ある感染症(伝染病)の世界的な大流行を表す語。語源は、ギリシア語のpandēmos (pan-「全て」+ dēmos「人々」)。 ※infodemic = ウェブ(ソーシャルメディア等)上で真偽不明の情報やフェイクニュースが流布し、これを多くの人が真に受けてパニック状態となり、社会の動揺が引き起こされること。

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■「小樽詩話会57周年記念号」(小樽詩話会 2020年12月20日) 「 壁 ―「響き」」   柴田望

■「小樽詩話会57周年記念号」(小樽詩話会 2020年12月20日
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「 壁 ―「響き」」   柴田望
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潮見台(sio-mi-dai)一丁目
小さな山の頂きに三角屋根
駐車場から家までの細い坂を歩きました  
内装は綺麗でした
一緒に暮らしていた人は
なぜか二階で眠りました
二階はひと部屋でした
仕事が忙しすぎて
一緒に暮らしていた人の
眠る姿を見たことはありませんでした
居間で二人で聴きました
壁の向こう
どかどかと階段を駆け上がる音
息を潜めて聴きました
やがて音は引きました 
鼠ではないとのことでした
「あぁ、たまに居るの」
一緒に暮らしていた人の
つぶやきは甘美でした
次の日、家全体が
壁もガラスも揺れました
地震ではありませんでした
「あぁ、たまに来るの」
一緒に暮らしていた人と
しばらく一緒に揺れました
若い夫婦は幸せでした
外へ出ると家の中以外
どこも揺れてはいない
異様に晴れていました
一緒に暮らしていた人が
大切に育てた庭でした
街全体が眩しくて
夕日がとても綺麗でした
本当はそれは朝日でした

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■詩人・渡辺宗子さんの訃報に接し

■詩人・渡辺宗子さんの訃報に接し、信じられない思いです。つい今月初めに「フラジャイル」第10号の巻頭詩稿の校正をやりとりしたばかりです。この号に収録させて戴きました6月26日サッポロアートラボ[サラ]での鼎談「文学における普遍性と特殊性」(高橋純先生、嵩文彦先生、柴橋伴夫先生)、ト・オン・カフェの会場で渡辺宗子さんはお隣の席。質問の時間に真っ先に鋭い発言をされて…隣の柴田の太ももをパシッと叩いたのです。ほら、ぼけっとしてないで、あなたも発言しなさい、と…。
 まだ私が本格的に詩の活動を始める以前、10年程前に道新夕刊の《道内文学》で「弦」を知り、お手紙を送り、文通がはじまりました。2015年2月に旭川中央図書館で東鷹栖安部公房の会『無名詩集』朗読会を行ったとき、宗子さんはなんと札幌からお一人でバスで旭川まで来てくださいました。私の拙い朗読と安部公房詩論を聴いてくださり、東鷹栖支所の安部公房資料展示も御覧戴きました。その後、北海道横超忌、豊平館の朗読会、饗宴の詩話会、小樽の白鳥番屋、北海道詩人協会、吉田一穂朗読会、帷子耀さん阿部嘉昭さん金石稔さんの詩集出版の祝賀会、昨年の支倉隆子さんの詩劇+ポエーマンズ…あらゆる詩のイベントで、笑顔の宗子さんにお会いできるのが嬉しくて、朗読を聴けるのが楽しみで、いつも「弦」を戴き、厳しい姿勢で詩に対峙されるお姿に圧倒されておりました。いつも励ましてくださいました。本当にまったく信じられず、厳しくて優しい宗子さんに認めてもらいたくて、ここまで頑張ってこれました。感謝の気持ちでいっぱいです。俤を感じています。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
・朗読の動画を御紹介致します。
詩劇「洪水伝説(稽古篇)」+ポエーマンズ 渡辺宗子 札幌20190831
渡辺宗子さん「胡桃」《第2回 ぽえむ・ライヴin豊平館
渡辺宗子「椿哀悼 」「第1回 ぽえむ・ライヴin豊平館」20180428
・渡辺宗子さんは長年の功績を讃えられ、(一社)日本詩人クラブの功労会員として顕彰されました。f:id:loureeds:20201223000620j:plain
 

二宮清隆さん第三詩集を発行! 『海へ』(フラジャイル 2021年1月1日)

二宮清隆さん第三詩集を発行!
『海へ』(フラジャイル 2021年1月1日)
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傷ついた来歴を待っていたのは、出会いのあたたかさと、故郷の風景であった。
平易なことばで、人、自然の輪郭と情動を描き出す。
深いところから浅瀬まで、自在に動く詩意識は、時にひとを海へと誘う。
「波がしらの白さが たくさんのハンカチのようにゆれ」ている海へ。(木暮純)
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 詩誌「フラジャイル」創刊3周年を記念し、同人・創刊メンバーである二宮清隆さんの第三詩集『海へ』をフラジャイル党より2021年1月1日(二宮さんのお誕生日!)に発行致します。編集は柴田望、帯は木暮純さんと、フラジャイル三周年を記念し、《こわれもの三銃士》による共同作業、手作り感溢れる仕上がりとなっております。二宮清隆さんは昭和22年生まれ、旭川市出身。旭川北高にて、当時教諭であった文芸評論家の故・高野斗志美先生に師事し、文学に目覚めました。当時のことが書かれた詩作品(「鍔」)も本詩集に収録されています。現在は埼玉県在住、2008年には作品「霜の花」でさいたま市文芸賞を受賞。日本現代詩人会会員。さいたま市文芸賞の選考委員を務めています。全国の詩誌などへ幅広く執筆を行っており、少年時代の旭川市の想い出を題材にしたものや、四季の抒情豊かな作品が多く、北海道の詩誌「フラジャイル」「青芽反射鏡」「小樽詩話会」「饗宴」「グラフ旭川」などの掲載作品を中心に、ここ数年の作品を今回の第3詩集に収めました。二宮清隆さんの詩的感性、大地と思想が編み出す時空の扉の向こうに海が見える。さいたまの詩人による北海道の詩集、これは、北海道の詩集だ!

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■詩誌「フラジャイル」第10号(3周年記念号!) 2021-1‐1.

■詩誌「フラジャイル」第10号(3周年記念号!) 2021-1‐1.
※12/20日曜に発送を致しました。北海道内は本日より、本州以南へは明日以降到着の予定でございます。
※札幌の書肆吉成様では販売分を納品戴きました。旭川市内書店へは来週以降納品の予定です。
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日頃より詩誌「フラジャイル」の活動への御理解を賜り心より感謝申し上げます。おかげ様をもちまして《第10号・創刊3周年記念号》が完成致しましたのでご報告申し上げます。
・2017年12月の創刊以降、皆様より沢山の温かい激励の御言葉、御支援、御指導を賜り、号を重ねることができました。誠にありがとうございます。毎号、ゲストの皆様からの御寄稿を賜り、号を重ねるごとに同人も増え、メンバーは小誌以外にも様々な活動を展開致しております。
・今回第10号の内容と致しましては、冒頭に、札幌在住の詩人、渡辺宗子氏の詩作品「雪だるまの地平線」を収めております。渡辺宗子さんは昭和55年、詩集『ああ蠣がいっぱい』で第17回北海道詩人協会賞を受賞。現在も個人誌『弦』の発行を続けています。長年の功績をたたえられ、今年、一般社団法人「日本詩人クラブ」の功労会員として顕彰されました。
・特集のイベント収録と致しまして、6月26日に「サッポロアートラボ〈サラ〉」のレクチャープログラムとして行われた、髙橋純氏(小樽商科大学名誉教授・フランス文学者)、嵩文彦氏(詩人・現代俳句作家)、柴橋伴夫氏(詩人・美術評論家)による鼎談「文学における普遍性と特殊性」を収めました。文学における普遍性、特殊性とは何か?という問題提起。会場にいらした上述の渡辺宗子さんの鋭い発言も収めております。
・同人の詩作品の他に、詩人の長屋のり子さん(小樽)が加島祥造氏(詩人・翻訳家)との思い出を連載で語る「加島祥造と私」(著名な加島祥造氏と北海道のつながりはあまり知られておらず、資料も少なく、貴重な記録と考えられます)。北見在住の詩人金石稔さんが、晩年の岡田隆彦(詩人・美術評論家)について書かれた「末期のかたち」。また、コロナ過で実際には開催できなかったイベントを「誌上」にて開催する試みなどを行っております。
・3年前には想像もできなかった状況が日常化致し、困難な時代を迎えております。一箇所に複数人が集うイベント等は行えず、本号の制作及び発送作業につきましても、最少人数にて検温・除菌・換気を徹底して行うなど、常に感染防御に努めた上での活動を致しております。
・それでも10月24日には、三浦綾子記念文学館主催の小熊秀雄朗読会・オンライン配信に参加の機会を戴き、「フラジャイル」同人5名(木暮純さん、冬木美智子さん、山内真名さん、林高辞さん、柴田望)が出演、小熊秀雄作品の朗読を行いました(Youtubeにて、現在もアーカイブ動画閲覧可能です)。苦しい状況下でこそ、文学の想像力の無限性が確認されますことを信じ、意図的に整理された情報の繰り返される奔流に操作されることなく、伝達の技法を芸術とし、多様な角度の視点や感性からの表現を志す詩の活動に、また初心を忘れず取り組んで参る所存でございます。引き続き御指導、御鞭撻の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
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詩誌「フラジャイル」第10号3周年記念号 目次
2 雪だるまの地平線  渡辺宗子
5 文学における普遍性と特殊性
サッポロ・アートラボ[サラ] 2020年度 レクチャープログラム 髙橋純 嵩文彦 柴橋伴夫
21 焼き絵「いのち」 制作・星まゆみ
22 朔  冬木美智子
24 帰郷 / 来意  界兀歩
26 大黒さんは此処に居た  菅原未榮
28 「うつつ」で  金井裕美子
30 粉雪の吹溜りに命を吐いて  川嶋侑希
32 かごの中の女王様  伊藤菜乃香
34 ひまわりの絵  二宮清隆
36 光の粒が落ちて  佐波ルイ
38 お道化うた  松本莉鼓
40 フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2020
42 玉ねぎ  小篠真琴
44 歴史(「ステレオ図法」より)  吉田圭佑
46 アシカの日  福士文浩
48 石・旅  佐々木虎力
50 テンダートーンの魂  星まゆみ
52 カミ族の子ども  木内ゆか
54 海岸線  柴田望
56 本と映像の日々29  山内真名
58 ウスバカゲロウ  荻野久子
60 一人と一人  木暮純
62 連載企画「加島祥造と私」  長屋のり子
65 末期のかたち  金石稔
67 柴田望『顔』について 2 杉中昌樹
69 ←「誌上祝賀会」はこちらで行います。
76 《旭川詩人伝説》
行方・青の位置  鵜野しのぶ 
無題  ふるき(山口勇雄)
80 受贈図書御礼   81 短信

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