詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

記念朗読会「『青芽』から『フラジャイル』へ」 ■9月29日(土)

■9月29日(土) 15:00~
 フィール旭川5階 ジュンク堂書店旭川店 ギャラリー・ジュンクにて、「『青芽』から『フラジャイル』へ」記念朗読会を行いました。
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■もっと早く、御礼を申し上げなければなりませんでした。皆様より多大なるご配慮、お心遣いを賜り、厚く御礼申し上げます。おかげ様にて、なんと60名以上ご来場の盛会となり、椅子がどんどん足りないなど思いがけず大きな会となり、私の運営側の配慮が足らず、反省すべき点が多々ございましたことを心よりお詫び申し上げます。
 詩誌『フラジャイル』、皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、『青芽』のごとく永く継続し、心のよりどころとしての創作の場を築いていくことができますよう取り組んで参る所存であります。
 日本が平和であること。同人たちの心のよりどころを築きあげること。72年間の『青芽』の活動で、この二つを勝ち得るために、大切なものを守るために、富田さんが命がけの壮絶な戦いを展開してこられたのだということに、今回の展示と朗読会を通して、あらためて激しく心を揺さぶられました。この偉業を引き継ぐことなど誰にできましょう。全く役不足ながらも、次の世代へ伝えることだけは何としてもできますよう、一生懸命勉強致し、精進して参る所存であります。
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■戦後の72年間、道内最長の歴史を持つ詩誌『青芽』が今年7月をもって終刊となりました。敗戦直後、旭川の第七師団が解体されたのが1945年8月、「師団通り」と呼ばれていた旭川のメインストリートが「平和通り」と改名されたのが1945年10月、詩誌『青芽』の前身である『学窓』が創刊されたのが1946年7月。以後72年間、1500人以上の詩人が関わり、多くの創作者を育てた『青芽』の歴史は、平和の歴史であります。
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■この旭川は、かつては小熊秀雄、今野大力、鈴木政輝、入江好之、下村保太郎といった綺羅星のような詩人たちが旺盛な活動を行い、様々な詩誌や詩の活動が銀河系のごとく発生しました。下村保太郎さんの後継者として、現在も旭川詩人クラブの会長を務めておられる富田正一さんが戦後すぐに創刊した詩誌『青芽』もその系譜にあります。東延江さんの本には記録されておりますが、インターネットには載っておりません。また、この会場に写真が展示されています、詩人・桜井勝美さん、富田さんの恩師であります小池栄壽(よしひさ)先生……。
 私柴田は高校時代まで岩見沢市に住んでおりました。かつて旭川で北海道詩人協会が発会されたときの世話人の一人でもあった加藤愛夫さんの「交響詩岩見沢」を歌わされておりました。今も全篇暗唱できます。大学からは旭川で、高野斗志美先生の戦後文学のゼミで、詩らしきものを書きはじめ、同人誌(『タイムポテンシャル』)を発行しておりました。9月号の現代詩手帖金時鐘の特集でした。本会場にも『火ノ刺繡』の展示コーナーを設けさせて戴きましたが、『フラジャイル』の活動に多大なるご理解を戴いております吉増剛造先生が、その現代詩手帖の冒頭に詩論を書かれておりましたが、富田さんたちが旭川小熊秀雄賞の選考委員をずっとされていて、1992年に、もう半ば強引に金時鐘氏の著書を特別賞に推されたのは高野斗志美先生であったということが分かってきました。(『死者を再び孕む夢』『原野の詩』)。
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旭川の文学の世界は、三浦綾子さんや井上靖さんだけではなくて、文芸評論家・高野斗志美先生(本会場に北高教諭時代の写真を展示させて戴きました。)のご専門は、旭川市東鷹栖にゆかりのある安部公房であります。高野先生が旭川に集めた膨大な安部公房資料は、安部公房ノーベル文学賞候補のとき、コロンビア大学に寄贈され、そこで先生も講演を行っております。(本会場には「東栖安部公房の会」の展示もさせて戴きました。) 
 郷土誌「あさひかわ」の代表渡辺三子さんが昨年8月に亡くなられましたが、安部公房の従姉妹にあたります渡辺三子さんの所蔵されていた膨大な資料は東鷹栖支所で展示されています。また、小説家井上光晴氏と高野斗志美先生が旭川で文学伝習所をやったときには、『青芽』同人で中心人物の一人であります、詩人・文梨政幸さんも、文学伝習所の活動を共にされていました。
 旭川文学の灯の光は三浦綾子さんや井上靖さんだけではなくて、こんなに多彩なのであり、そして富田さんの『青芽』を中心に動いてきた詩の世界があって、旭川は詩のマチでありますことを、なかなかインターネットにも書かれていないものですから、こうした活動を通して、多くの方に伝えていけますよう、僭越ながら、私たちの世代から、勉強を重ね、行って参る所存であります。
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■展示会場には、詩誌『青芽」の歴史を辿る資料や写真、詩作品の色紙など、約80点を展示致しました。旭川市教育委員会旭川文学資料館、旭川詩人クラブ、東鷹栖安部公房の会の後援、そして多くの方のご支援、ジュンク堂さんの多大なるご協力も戴き、今回の実現に致しました。本当にありがとうございます。
 朗読会のほうは、前半は『青芽』の後継誌として昨年創刊致しました、『フラジャイル』の同人による自作詩の朗読、後半は、尊敬するゲストの詩人の皆様にお越し戴きました、その方々による朗読、最後に『青芽』に掲載された先輩詩人の作品を、『フラジャイル』の同人が朗読を行う、初めての試みに挑みました。旭川にてこれほど大きな現代詩の会は、かなり珍しいという状況になりました。誠にありがとうございました。感謝の気持ちをこめて、各シーン動画をここにアップさせて戴きます。
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【詩朗読】佐々木虎力「見本林」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】荻野久子「北の街あさひかわ」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】小篠真琴「海が見たい」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】林高辞「鎮魂の霧雨」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】冬木美智子「海の向こうの芸術展」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】星まゆみ「想いでの家」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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 【詩朗読】二宮清隆「かごの鳥」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】木田澄子「まどろむ子ども」他・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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 【詩朗読】金石稔「ガキたちの筏ー初航海篇」より・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】長屋のり子「栗」・踊り手:羽鳥☆NORIKO・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】村田譲「本日のヘクトパスカル」「古老の河」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】森内伝 木暮純「望郷 Ⅰ・Ⅱ」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】柴田望 富田正一作品「飛行機雲だけが知っている」「生きる」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【詩朗読】富田正一「戦友」「老春」・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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ボーナストラック:福士文浩「スカボロー・フェア」 「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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【開会のご挨拶】柴田望・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929記念朗読会

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【閉会ならぬ開会のご挨拶】 木暮純・「『青芽』から『フラジャイル』へ」20180929

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■第32回旭川詩人クラブ詩画展

■第32回旭川詩人クラブ詩画展が、旭川文学資料館 企画展示室にて行われております。
 初めて参加させて戴きましたのに、沓澤さんがお隣に柴田のコーナーを作ってくださり、ガラスケースまで出して戴き、恐縮です。昔の詩集や新聞記事なんかも飾って戴いて…誠に、ありがとうございます。
 皆様の作品、大きくてカラフルで迫力があり、メッセージ性や、遊び心もあります。才能あふれる旭川詩人クラブ豊饒なる輝きを、ぜひ多くの方にご覧戴けますよう、御来場をお待ち申し上げます。
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■第32回 旭川詩人クラブ詩画展
2018年10月2日(火)~11月22日(木)
テーマ『空』
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■関連イベント【詩と遊ぼう!】
11月6日(火)13:30~
旭川文学資料館 企画展示室(参加無料)
日程 2018年10月2日(火)~11月22日(木)
時間 午前10時~午後4時
住所 旭川市常盤公園内 常盤館
開催場所 旭川文学資料館
備考 【休館日】日・月・祝祭日
お問い合わせ先
主催者名 旭川詩人クラブ・旭川文学資料友の会
電話番号 0166-22-3334

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北海道立文学館「吉田一穂展」 11月4日「一穂への遙かなる最弱音(ピアニッシモ)」

■最新の『現代詩手帖』10月号に北海道立文学館の「吉田一穂展」の広告が入っており、その中に恐れ多くも吉田一穂の顔写真と一緒に私たちの名前を入れて戴いており(フラジャイルからは木暮純と柴田です。)、11月4日の朗読会「一穂への遙かなる最弱音(ピアニッシモ)」のご案内が掲載されております。できるのだろうか・・・。吉田一穂作品と、吉田一穂作品にちなんだ自分の作品を読むという課題を戴きました。ピアノ演奏と、動画制作の宿題も、あります。できるのだろうか。試練を賜り、誠にありがとうございます。がんばります。自作詩は2ケ月かけて、かなり校正しております。

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「 粉 」
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屋外広告の過大な紙片は舞う
窓ごしリングで殴りあい 観客も黄昏 
勝ったほうのぶんかに染められていく
オカシイだろう
地球のほうが回っているだなんて
法律で許されないはずだ
あんなに見事に空中に織りこまれて
一本の電柱に百本以上ものケーブル 
頻繁に短い音符のクラクション鳴らす
信号待ちの表面張力 コップの底に沈む
巣にたかる蜂のごとく バイクが満たす
六車線もの日本車の隙間を

( 街
  白金の幾何学

  高層建築の光の祝祭
  あゝ鮮麗な空間の形 )

ソフトクリームの液化より速く検索
バンコクのデパートの書店に詩のコーナーは無い
多重に絡む遺伝子の副音声で国境は無いのに
レンブラントホテルのプールで水着なのは白人と日本人だけ
鱗粉を禁則に孕み 

ふりがなのごとく針金(ナイフ)緩ませ 
アルファベットのお土産を売る現地の若者を背に 
仲間たちはフキダシくり抜かれて 
夜の街へ溶けていった

( 不眠の華に晝く屋根裏の月 )
( 有機解體の頽廃期へ分裂し下降していく )

※()内は吉田一穂の作品「都市素描」(詩集『海の聖母』)より

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「 顔 Ⅷ 」 柴田望

■ある幼年期の肯定のために、新月へ向かって儀礼励まし、
無が有へ変わりますように。本日校了とし、小樽詩話会(会報620号)へ送ります。

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「 顔 Ⅷ 」
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桜が丘小学校にさんねん
卒業アルバムに妖精が写ってた
帰り道に水辺
釧路川
春採湖かもしれない(遠すぎる)
水も木も草の背もさやかに光り 
虫の音をかき分け 
仙人に会いに行く
行き方を何故か忘れて
辿り着けない日もある
川原全体きらきらして
おじいさんは穏やかに座る
長い髪 長い髭 亀の尻尾
ずっと伸びているように感じる
弟や友だち何人かも連れて行った
子どもにしか見えない夢じゃない
おじいさんの前に座る甕は
家を建てるとき玄関の前に溜める器
永久にきれいな水が入っていました 
住んでいたのは興津(o-u-kot)で   
春採湖か
鶴ヶ岱だろうか(遠すぎる)
大人になってからも
きれいな水がそこにあったと繰り返す
甕を覘くと境は薄くなって 
話したことはぜんぜん憶いだせない
ぜんぜん怖くないし
学校から三〇〇メーターくらい離れた
美しい世界
同じ道を辿っても親と行くと
その場所は無くて
春採(haruturu)に転校するまで   
何度も行ったはずなのに
弟は憶えていない
*

   o-u-kot = 互いに合流する川
   haruturu = 向う地
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◆10月2日(火)テンポラリースペース中森、◆10月3日(水)小樽文学館、ありがとうございました。

◆10月2日(火)、(吉増先生が「札幌のアートの核へようこそ」と言われる)テンポラリースペース中森さんで行われた吉増剛造先生と《花人》村上仁美さんのイベントに伺わせて戴きました。吉増先生の銅板や、石狩川の芒に星の火花が編みこまれた大きくてつつましやかな生け花にもインクが落とされて、落としたご本人がアイマスクを外して初めて見た瞬間の驚きが非常に大切であって、そうした状態を作らなければならないという貴重なお話を戴きました。それは演奏されるたびに結果の異なる偶然の音楽のようでもあり、銅板のインクや生け花、スペース全体が芸術である、もの凄いオーラに満ちた稀有な空間で、「こうして一人の芸術家が誕生した、・・・・・・。」と盛大に祝福されたその場に立ち会わせて戴き、感激で言葉もだせず。インクが落ちるまでの瞬間は一瞬ですが、一篇の詩が最初の着想を得てから書き上げられるまでの時間、あるいは『火ノ刺繍』という一冊の本が世に編みだされるまでの時間はまさしくインクが落ちている時間であって、あらゆる偶然や想いの組み合わせ積み重ねインクの落ちた結果を、初めて見たときの、驚きと感動、すべての仕事に通じるような、物の見方が大きく変わるようなお話を戴き、まさに瀧口修造らが日本に紹介したシュルレアリズムとは、日常生活に影響や変化を及ぼすものだということを経験させて戴きました。「雨ってどうして降るんだ、そんなこと誰にもわからない、・・・・・・。」ペリカンの紫が落とされた銅板は天候によって刻一刻と変わる航空写真のようでもあり、そこには無限の情報が刻まれていて、作者は無限の世界を提供している。読者はそれを無限に読みつくせる。作品はそこで終わりではなくて、「これを映像に撮って、その画像にまた手を加えていく、・・・・・・。」 書いた後も決して書き終わることのない詩のように。昨年12月、旭川で吉増先生がインクのパフォーマンスを行われたとき、「僕は瀧口修造の弟子だから、こういうことをしなくちゃならない、・・・・・・。」と仰られ、その一言がずっと熱く胸に突き刺さっていて、『火ノ刺繍』を手に入れて一番最初に探したのは瀧口修造についての記述でした。そこに書かれていた「瀧口修造の写真には獲物がいない!と叫ぶようにして気がついていた」という言葉については、あれから様々な資料にあたってみたけれどまだ掴めていない。しかし「直接に未知の実在につながる」という記述については、アイマスクを取った瞬間に起こる奇跡としてあの場にいた誰もが直接に視た。
 翌10月3日(水)小樽文学館で恐れ多くも発言の機会を戴いた際に、テンポラリースペース中森さんで戴いた奇跡のような透き通る宝物のDMを、50人以上のお客さんに回覧をさせて戴きながら、上述のお話をさせて戴き、そのとき吉増先生はステージをゆっくり降りて来られ、銅板や原稿に赤いインクを落とされて、会場には「火ノ刺繍」の素晴らしい評釈を書かれた髙橋純先生 (一篇の詩がこうして読まれていくんだ、というスリリングな稀有な体験をさせて戴きました。『フラジャイル』第3号に掲載。)も来られて、髙橋純先生が持参された木ノ内洋二さんの幻の原稿が玉川館長の手に渡された瞬間、玉川館長より瀧口修造が小樽で看取った美しい姉の経営していた文具店が特定された瞬間のお話、木ノ内洋二さんの手からイクパスイが吉増先生に渡された瞬間、玉川館長が瞳に熱いものを溜めて木ノ内さんのことを語って沈黙された瞬間、吉増先生がアイマスクをして銀の古代天文台の詩を朗読された瞬間、木ノ内さんがいつも持ち歩いていた大切なトランクに入れていたイクパスイがもう一本あると分かった瞬間、「直接に未知の実在につながる」瞬間、インクが雨のように落ちて「雨ってどうして降るんだ?」アイマスクをしてその音楽を聴いたときの、アイマスクを外してその音楽を観たときの、大切にしまわれていた真実がだんだん顕れる、世界が別の様相を帯びてくる驚き。その場にいた方たち全員と実感を共有できた、そんなまたとない凄い会でありました。これが詩の力なのか。
 そのせいか、奇跡のような二日間の最後に、小さな打ち上げがあって、小樽のお寿司屋さんを出たとき、吉増先生についに打ち明けてしまいました。それは、柴田は高校大学と音楽に明け暮れて、ジャズやロックでピアノを弾いて、チック・コリアゲイリー・バートンと握手したこともあって、様々なミュージシャンの影響を辿っていくと、そこにはギンズバーグやケルアック達のビート・ジェネレーションがあって、そういうのばかり読んでいました。そのとき日本の詩人で読んでいたのは吉増剛造だけで(ドアーズやルー・リードボブ・ディランを聴くのと同じときめきで吉増剛造を読んでいて、吉増詩に比べたらボブ・ディランなんて古い)、他の日本の詩人は読んでも全然わからないし、読む必要も無かったことを、最後の小樽の不思議な夜に、今考えるともの凄く恐縮なことなのですが、なぜか自然と吉増先生ご本人へついに打ち明けてしまって、すると吉増先生は、それを貫けばいいのだと、励ましてくださって、柴田の書き方についても、とてもありがたい御言葉を戴いて、「変な詩論なんて必要無い、これから、今までの詩も全部変わるのだから、……。」と仰られ、今日の会の大切な瞬間のお話をされて、あれが詩の力なのだと仰られて、……。戴いた御言葉を宝物にして、自分は生涯大切に抱えて、書いていくのだと小樽で決意した瞬間からまだ24時間経っていない今日が信じられないくらい熱い。

 

2018-10-04.

 

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■「北海道詩集」No.65 2018年版

■「北海道詩集」No.65 2018年版が届きました。
今回初めて参加させて戴き、作品「手紙」掲載戴いております。
詩集展望に坂本孝一さんの評にて『黒本』のこと、
詩誌展望に山内みゆきさんの評にて『フラジャイル』のこと、
掲載戴いております。誠に、ありがとうございます。
「北海道詩集」No.65、北海道詩人協会発行(1,200円税込)です。ご興味お有りの方はぜひ、北海道詩人協会のFBグループをチェックください☆
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「 手紙 」 
~詩誌『青芽』山田稔追悼特集号
        (昭和三十四年十一月)

                柴田望
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力強い赤さを持った星が西方へ流れました。あれは貴方なのでしょうか(内村秀)
決して再び語ることのなくなった貴方の前で私に許される言葉は本当はない(渋谷美代子)
人間の生命とは、いったい何であろうか。未来のある一人の若い生命をうばった孤独な自我は、僕達に何を問うというのだろう(文梨政幸)
彼の作品の中に多くある〈航海〉、その中に私はまざまざと彼の悲しみを見る(竹内和雄)
一体、山田君の死を傍観していたのは誰だ(中村道夫)
太宰は彼にとっては信仰に近いようなものだった(佐藤武
私はまだ君が死んだなんて、信じられない(富田正一)
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国学院大学で平安文学を専攻していた詩人山田稔さんは昭和三十四年八月十九日、東京都多摩川上流太宰治の碑前にて命を絶った
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彼はまだ二〇歳だった
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今日こそは、今日こそはと思う。はかない期待をよせてまた毎日を僕のうちからうばいとるのだ。新たな世界への歩みをつづけるのだ。何がどうとはもとよりわかっていること。すべての知人に手紙をかいて僕の非礼をわびよう(山田稔
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■『小樽詩話会』会報No.618より

■『小樽詩話会』会報No.618より
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「 集合写真 」 柴田望
(2018年5月26日 江別市「 ドラマシアターども」にて、宮澤賢治役としてこの自作詩を朗読)
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(心象を映すカメラがあった時代 ある農学校の先生の眼差し)
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してはならないことを かれは何度も繰り返す
何故それをやるか? 誰も訊こうとはしない
失礼ながらみんな じぶんの言いたいことを
言っているだけだ じぶんの言いたいことを
訊いてほしいのは かれだけじゃない
*

つりあいをとっているのだ 迷惑をかける理由は 
そうすることで ようやく つりあいがとれるだけなのだ 
*

そもそも何が言えるのだ かれと同じ体験を誰もしていない
それほど強く殴られたわけじゃない
してはならないことを どうしても
しなければならないほどの 犠牲なのか 周囲だけじゃなく 
かれ自身わかっているのだ どうすればいいか その答えを
*

たまに忠告するだけじゃダメだ 変えたいなら
まずはこちらの行動を 根本から変えなければ
その覚悟もないくせに とやかく言っても 見抜かれます
*

どうすれば解決するか わかっているから悩むのだ
重い腰が 持ち上がらないから悩むのだ
*

かれひとりの問題じゃない わたしたち全員に
与えられた課題なのだ たましいの修行だから
解決しなくたって いいじゃないか
頭を寄せあって それでも解決しないから
みんなのためになるのだ かれのおかげじゃないか
卒業しなくたって(ダメだけど…)いいじゃないか
*

問題が舞台を去って してはならない過ちを 繰り返すのをやめて 
忘れかけて 温泉旅行で撮った写真だ 家族みんなで撮った写真だ
*

みんな笑っている つりあいがとれているのだ
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★9/20(木)「小樽花嫁センター」で行われました、森れいさんの例会に参加させて戴きました。石の登場する詩作品、宮沢賢治、木田澄子さん、藤田民子さん、安英晶さん、森れいさんの御作品・・・実際に作品に登場する石も見せて戴き、とても勉強になりました。石は膨大な距離や時間や人の記憶を超えて届けられるもの、という着想を戴きました。素晴らしい例会でした!!(プラチナに関する想い出話をさせて戴き・・・質屋に持っていくのが正解!とご評価戴きました)

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