詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

5月6日(金)の北海道新聞夕刊《マイたうん旭川》に、「詩誌「フラジャイル」第14号~吉増剛造さんの講演も~」

■5月6日(金)の北海道新聞夕刊《マイたうん旭川》に、「詩誌「フラジャイル」第14号~吉増剛造さんの講演も~」と、大きくご紹介戴いております。誠にありがとうございます。「詩人の吉増剛造さんが昨年12月に、旭川の文化拠点だった河原館を訪ねた経験などを語った講演録も掲載されている。」昨年12月12日、旭川市中央図書館での「小熊秀雄生誕120年記念講演」について。「幼少期の思い出、映画…多彩なテーマ」…(幼少期の思い出)谷口雅彦さんのご寄稿や、(映画)山内真名さんの詩篇。また、今回ご参加戴きました皆さんによる「テーマも多彩で感性豊かな作品」群。多くの方にお読み戴き、何かを感じて戴けましたら幸いです。「道新を見たよ!」とご連絡多数戴いております。誠に恐縮です。心より感謝申し上げます。

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詩誌「フラジャイル」第14号  目次
2022年4月25日発行
【特集】
2  小熊秀雄生誕120年記念講演 小熊秀雄への応答
~現代への影響と将来への展望~
特別講師 吉増剛造   講師 柴田望 木暮純
2021年12月12日(日) 主催:旭川市中央図書館
17 旭川は鉄器の味がした  吉増剛造
21 講演会に寄せて  書肆吉成店主 吉成秀夫
23 吉増剛造先生の様々な実践から感じる、詩の能力への希望 コトニ社 後藤亨真
【詩作品】
24 《ゲスト寄稿》 公園  葉山美玖
26 投了  冬木美智子
28 虚脱  松本莉鼓
30 ふきのとう  福田知子
32 精が出ますね  二宮清隆
34 形  川嶋侑希
36 【気密のアフロディテ】  木内ゆか
38 鵜野しのぶ  わかれ雪  38 三分間ニュース  
40 ■共作の試み(小篠真琴から、鵜野しのぶへの手紙より) 
42 それが希望  小篠真琴
44 本と映像の日々34  山内真名
46 みいこはここに居ます  菅原未榮
50 福士文浩  やまぼうし(改訂版)  52 存れ光(KSJバージョン)
53 佐々木虎力  周年を祝う  54 自然に帰れ  55 一杯の雑炊 
56 荻野久子  春告げ鳥  57 種子
58 木下ヒサ子  正ちゃん帽  60 如月
62 ギターの音色に惹かれて  星まゆみ
64 侵されたわたしの錆びた車はあの街を走れるか  木暮純
66 労働  伊藤菜乃香
68 ヨレすぎ のよる  佐波ルイ
70 れんげ  金井裕美子
72 「旭川歴史市民劇実行委員会」の第45回旭川ななかまど文化賞受賞と東延江先生が『詩と思想』3月号(土曜美術社出版販売)に書かれた「わが郷土旭川の詩人―鈴木政輝」に深い感銘を受けて  柴田望
【特別寄稿】
74 岡和田晃  現代北海道文学研究(四) 「北方領土文学」をめぐるアポリア
78 谷口雅彦  生まれた春光の町と緑町の光と影の家と最初の写真を撮った日のこと。
79 伊藤菜乃香 朗読と音楽の会 レポート
      『瑠璃も玻璃も照らせばひかることばたち』  
82 〈書評〉木暮純
・『高田博厚=ロマン・ロラン往復書簡 回想録『分水嶺』補遺』 高橋純〔編訳〕(吉夏社
・佐藤裕子詩集 『風媒譚』(阿吽塾)
82 同人特報 / 83 受贈図書(御礼)/ 84 短信 
【表紙】 『日々の旅1993-2002』(ワイズ出版写真叢書15)より 作品No.126  ©谷口雅彦

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「北海道詩人」No.151(2022.4.30)

加藤茶津美さんの揮毫による「北海道詩人」No.151(2022.4.30)。北海道詩人協会会報が本日届きました。今回も《EVENTS》《活動近況》欄に旭川の活動のことをたくさん紹介して戴いており、誠にありがとうございます。昨年10月24日(日)に開催の「コトバスラムジャパン2021 北海道大会」についても、フライヤー画像と共にご紹介戴いております。
 柴田は3月27日(日)に開催の理事会について報告(P5)を寄稿させて戴きました。総会を5月15日(日)に予定。札幌市教育文化会館4F、感染症予防対策を徹底し、換気された広い会場での開催となります。皆様と再会できます日を心待ちに致しております。

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・NHK映像の世紀バタフライエフェクト「ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」

https://www.nhk.jp/p/ts/9N81M92LXV/episode/te/WKRMK8NPRK/

NHK映像の世紀バタフライエフェクト「ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」

■5月9日…ロシア戦勝記念日のこの日、NHKで放送されたことに大きな意味を感じております。
 大学時代に読んだルー・リードの詩集『ニューヨーク・ストーリー』(梅沢 葉子 訳)に、「正しいことをやる」と題された、ルー・リードによるハヴェル大統領のインタビューが掲載されており、そこでチェコスロバキアの「ヴェルベット革命」や「憲章77」、劇作家で大統領になったヴィーツラフ・ハヴェルについて学びました。

 「60年代の全精神が、反体制の反乱が、私の世代や若い世代の精神面に大きな影響を与えて、それがものすごく奇妙な方法で現代まで受け継がれています。」
 「私自身は憲章77の最初の3人のスポークスマンの一人でした。私が言いたいのは、音楽、アングラミュージック、特にヴェルヴェット・アンダーグラウンドというバンドの1枚のレコードが我が国の発展の中で重要な役割を果たしたということです。アメリカ人の多くがこのことに気づいていませんね。」(ヴィーツラフ・ハヴェル)

 ルー・リードが1990年にプラハを訪れたインタビューについても、番組の後半に詳しく紹介され、その時ギャラリーと呼ばれるクラブで行われたライブ映像、ルー・リードとプラスチック・ピープル・オブ・ザユニバース(PPU)の共演の映像も見ることができ、とても感動的でした。

 「私がもちかけた演奏曲を全部かれらは知っていた。まるで私のうしろにモー、ジョン、スタールがいるようですごく晴れやかな気分だった。」
 「私の音楽を演奏して刑務所に入っていた者もいた。刑務所に入っていた時、自分を勇気づけ慰めるために私の歌詞を暗唱していたと大勢が言った。」(ルー・リード

 河出書房新社の『ニューヨーク・ストーリー』(梅沢 葉子 訳)を手に入れたのは1992年…高校生でした、なんと30年前です。そのときはNHKでこんな映像が観れるなんて思ってもみませんでした。番組では「憲章77」にインスピレーションを受け、2008年の12月10日に作家劉暁波ら303名の有識者がインターネットで世界中に広めた「零八憲章」のことも紹介されました。服役中に死去したノーベル平和賞受賞者・劉暁波の著書『現代中国知識人批判』を、尊敬する伯父の野澤俊敬(北大教授、中国文学研究)が訳しました。

 人々の魂を呼び覚ましたヴェルベット・アンダーグラウンドの芸術(あの「シスターレイ」等の入った真っ黒いセカンド『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』)と、「機関銃や戦車も人間の意志や理念に勝てません。」というヴィーツラフ・ハヴェルの言葉が現代の言語空間に深く刺さるようです。

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■『ユリイカ』(青土社)5月号、特集「菌類の世界」の小笠原鳥類氏の詩篇「すべての生きものはキノコだ!私は恐竜図鑑を読んでいた」

■『ユリイカ』(青土社)5月号、特集「菌類の世界」の小笠原鳥類氏の詩篇「すべての生きものはキノコだ!私は恐竜図鑑を読んでいた」をとても興味深く拝読。すべての生きもの、世界は、菌で出来ている。「美しく壮観」である。菌類とは、一般的な言葉ではキノコ。菌は人間の体内にたくさん存在している。いにしえの『フィッシュマガジン』の魚たちや、《わくわく動物ランド》の動物たちも菌だらけです。
 冨岡悦子さんの詩集『反暴力考』(響文社)に「キンルイクン」と呼ばれる転校生が登場しますが、例えば「菌」イコール汚いといった前提はおかしい。菌の働きが生命を助けている。取り除きたい菌もあれば、健康を助けてくれる菌もある。そしてその評価は人間の都合による。YouTube動画で見ることができるトヨタ自動車2020年の入社式で豊田社長が「コロナ禍でも桜は今まで通り咲いている。鳥は今まで通りさえずっている。自然界には影響がない。右往左往しているのは人間だけかもしれない。」というようなことを言っていたのが印象的でした。コロナ禍でも、菌は右往左往していない。菌からすれば、人が菌を悪用したり、人が人を操っているようにしか見えないかもしれません。
 徳川家康が見たという不思議な生き物、「肉人(ホウ)」も「仙薬」だったのならば、健康を助けてくれる菌を沢山保有している動物か、爬虫類(恐竜?)か、キノコの一種か、善玉菌そのものであったのかもしれない。「《宇宙の怪物》のような図鑑」を調べたらわかるでしょうか。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3678

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■新・日本現代詩文庫157『佐川亜紀詩集』(土曜美術社出版販売)

■新・日本現代詩文庫157『佐川亜紀詩集』(土曜美術社出版販売)を大切に拝読させて戴いております。
 
 プーチンがドンバス出身の少女の詩を讃えてプロパガンダに利用するこの世界に、劣化ウランを浴びたイラクの少女の「《ヒロシマの眼で世界を見て》」(「ヒロシマの眼」)という囁きを響かせる佐川亜紀さんの詩がある。

 プーチンがロシア兵の戦死者数をごまかそうとしているこの世界に、「一九四六年に公布された日本国憲法に/アジアの二千万人の死者が/日本の三百万人の死者が/沖縄の二十万人の死者が/ヒロシマナガサキの二十一万人の死者が/死者たちが文字の裏に張り付いている」(「聖なる泥/聖なる火」)と告発する佐川亜紀さんの詩がある。
 
 プーチンが「電撃的な対抗措置を取る」「ロシアは他国にない兵器を保有している。必要なら使う」と核兵器の使用をちらつかせて西側を脅すこの世界に、「すべてが焼け 底が抜けた青空に見たものは何だったのか」(「わたしはわたしの歌をうたう」)と問う佐川亜紀さんの詩がある。

 「詩人はいつも低いところを指向し、苦しみ傷つけられる者たちの隣人になることを願う。詩と芸術が貧困や苦しみをなくすことはできないかも知れないが、慰めることはできるからである。苦しむ者、悲しむ者に、人間の言語は非常に限られた役割しかできない時が多い。それで、むしろ黙って静かにそばにいてやること、手を取って言葉なしに一緒に涙を流してやることが、もっとも適切な慰めであるという話もある。しかし、詩人の慰めは口先だけの言葉ではなく、単なる憐憫以上のものであるし、まことに内面から共感し同感して同行する言葉なので、偉大な力を発揮することができる。佐川詩人は、世界(世)に向けて広く受容される詩的発信を持続してきているし、これからも引き続きやるべき理由が、ここにあるだろう」(解説:権宅明(詩人)「歴史を洞察する究極的な希望の送信者」より)

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■美しい装丁の第一詩集、角野裕美さんの『ちゃうんちゃいます?』(土曜美術社販売出版)

■美しい装丁の第一詩集、角野裕美さんの『ちゃうんちゃいます?』(土曜美術社販売出版)を昨年から何度か拝読させて戴いております。誠にありがとうございます。
 北海道に住む私は、「ちゃうんちゃいます?」と言われたことも言ったこともありません。解読できない、謎の多い、素敵な言葉です。「ちゃう」とは「ちがう」という意味だと思うのですが、それが繰り返され、「ます」という丁寧語かと思いきや、疑問形へ一瞬で変化を遂げる。もし言われたら、ドキドキしてしまうと思います。「あれ、ちゃうちゃうちゃう?」「いや、ちゃうちゃうちゃうんちゃう?」とか、使い慣れている方にとっては言語は潜在意識に浸透されている技術ですから、日常語なのかもしれませんが、そうでない人にとっては分からない。分からないけれど知識としては知っている、テレビでは聴いたことがあるけれど、遠い昔から使われていた言葉が少しずつ変化していったような…普通会話のふりをした呪文のよう。「かなんな」も魅力的な言葉。顕在意識で読める言葉を用いながら、潜在意識への通路を拓き、とんでもない次元へ詩は導く。
 詩篇「ちゃうんちゃいます?」(P38)では、詩人の思考に触れることができるような錯覚を覚えます。あの時言い返せばよかった、、、みたいな感じでしょうか。「イヤなことを/ズバッとでもなく遠回しでもなく/身体の斜め上から/切り込んでくる感じで/上手いわな/いつの間にやらシュッて切られてる/じんわり痛い傷を負わしてくるわ」なるほど、じくじく痛みます。
 しかし、こういう痛みを与える人は、誰にでも同じような接し方をするので、後で痛い目に遭うでしょう。世の中は何も言い返せない人ばかりではないのです。気にしない人もいるでしょうが、このやろう!と徹底的にやり返す人もいるのです。他人とは自分の鏡。人を不機嫌にさせるということは、波動の低さです。付き合うことはありません。いい経験をさせてくれてありがとう、と、笑顔で太陽の中へ手放し、こっちは高い波動で生きればいいのです。「今度いっぺん言うてみたろ」とやり返すのではなく、老子のごとく《理性的ではない相手に対しても理性的に対応する》、大人の対応でそっとしておけば敵は自滅しますよ、とか、読者として主人公に味方したくなってしまう、実質感の深い読書体験。素敵な御本です。誠にありがとうございます。

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■石毛拓郎さんの新詩集『ガリバーの牛に』(紫陽社)

■石毛拓郎さんの新詩集『ガリバーの牛に』(紫陽社)をご恵送戴きました。誠にありがとうございます。「思想の波動と、故人の残影を銘記し、人間と社会への新たな視点と重点を提示する」この一冊を、何故か偶然メーデーの今日、拝読させて戴いております。
 小熊秀雄賞を1978年に受賞された石毛拓郎さんの御詩集『笑いと身体』が旭川市文学資料館に展示されています。旭川に住んでいるにも関わらず、新詩集に収録の詩篇「ラドリアの恋」に吉岡実詩篇「苦力(クーリー)」とともに登場する「旭川神居で 眠っている」陶芸家、T・S氏について、私は勉強不足でございました。「納屋工房」の版画家・陶芸家、佐藤倬甫氏。吉岡実詩篇「苦力」は昨年発行された講談社現代新書『詩とは何か』(著者:吉増剛造)に「死の深みに触れているところがある」「おそらくこの詩を吉岡さんに書かせたのは、「苦力」、「苦」、「力」というこの二つの文字の力だったのです。」と論じられていました。造形に魂を吹き込む「力」、陶芸家の作品に想いを馳せます。
 詩篇駿台の青い空に」では、宮内喜美子さんの『わたしたちのたいせつなあの島へー菅原克己からの宿題ー』(七月堂)にも収録されていた「マクシム」の詩とここでも再会。ある時代の生き方を象徴する、時代を超えて声や青空が胸を打つような力を持った、〈陰の秘密〉に支配された現代においても有効な二行について。「陰を求めて/〈陰の秘密〉が わからずじまいのなかでも/おれは このことばがすきだった/――マクシム、どうだ、/青空を見ようじゃねえか」。

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