詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

KOTOBA Slam Japan 2022【北海道大会】

KOTOBA Slam Japan 2022【北海道大会】

開催日:2022年8月14日(日)
主催:詩誌「フラジャイル」
協力:町田すみ

開催形態:有観客現地開催、現地出場・リモート出場混合
現地観客とオンライン視聴者よりランダム選出された審査員5名による採点制

開場13:00  大会/配信スタート13:30
会場: 札幌 俊カフェ
(札幌市中央区南3条西7丁目4-1 KAKU IMAGINATION 2F)

ご観覧:¥1500
観覧申し込みは下記観覧申し込みフォームより


【出場エントリー】
エントリー費:¥1500
(現地出場:当日現地精算・リモート出場:エントリー後お支払い方法をメールでお知らせ)
エントリー開始日時:2021年6月19日(日)18:00〜
下記エントリーフォームより出場エントリーを受付

ルール:現地出場6名、リモート出場6名の12人制
現地観客とオンライン視聴者よりランダム選出された審査員5名による採点制
優勝者1名が全国大会進出
詳細は下記より詳細ページにてご確認ください。

【詳細】
https://www.kotobaslamjapan.com/kotoba-slam-japan-2022/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E5%A4%A7%E4%BC%9A/

 

【観覧申し込み】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeKZXWtl5BAnrscM1K_Bq84X_mmQpAPBJ_6qGScCFEptuKr5w/viewform

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■祖父の命日に 「海岸線」三部作 柴田望

■本日、5月31日は祖父の命日です。祖父は樺太出身、樺太師範から学徒出陣で土浦海軍航空隊に入隊、1945年5月27日の海軍記念日神龍特別攻撃隊編入され、特攻訓練中に8月15日を迎えました。祖父の手記をもとに「海岸線」という詩篇を書き、詩誌「指名手配」4号に掲載戴き、昨年発行した『壁/楯/ドライブ/海岸線』という詩集に纏めました。優しい校長先生で、夏休み、冬休み、勉強を教えてくれました。戦争時代のアルバムを見せてくれ、死んでいった戦友の話をしてくれました。祖父の想い出を胸に「海岸線」三部作をここにアップ致します。

*******

海岸線  (樺太

 一本の鉛筆が、一個の消ゴムの意味を持ち、魂の落書を消す。
 人間が消えたのだ。
 そのあとに何が残るか、はじめて、ノートの意味が開かれたのだ。
  ~文梨政幸「開く」『核詩集 1980年版』(核の会)

 土地によって生息する樹や言葉 
 水の巡りは異なる 樹は奇蹟だ
 最古の有機の命が受け継がれている
 人体に何十憶年分もの軛が棲む
 悟らせてはならない
 たった一人が神である可能性を
 危険な血筋かもしれない
 霧散する、世代の配列の痕跡
 未来へデルタ状に広がる
 海を越えて故郷を運ぶ
 どんな樹が生えていたか
 「まるで樹の切株だらけで、墓地の中へ
  レールを敷いたようなものです。」(林芙美子樺太への旅」)
 そんなはずはない 
 トドマツは樅 エゾマツは唐檜
 針葉の水の巡りに結晶が降る
 どんな家に住んでいたか
 豊原市東一条裏通り 食酢屋の裏の長屋
 最初の記憶 近所の葬式 よちよち歩きの弟が
 トッタン鋲を飲みこんだ
 母は慌てて弟を縦に抱き病院へ
 本人はけろっとしていた
 恵須取の役所を辞め 父は雑品屋へ転身
 リヤカーで町じゅう歩く だんだん暮らしは楽になり
 西六条南二丁目 古物商看板
 ある冬の朝、真っ黒い浮浪者が店にいた
 母は怯えていた 男はモゴモゴ言っていた
 「何か食わせてください」 飯場から逃げてきた
 母はおそるおそるどんぶりに汁をかけて差しだす
 父は怒った 土間ではなく、家に上げなさい
 父は男に五円を渡した 何度も頭を下げて出て行った
 子ども心に恐ろしかった 父は言った
 「勉強しなければ、あの男のようになる」
 豊原尋常第三小学校 入学前に算術は九九まで覚えた
 円の描けない図画だけが乙 他はぜんぶ甲
 体操の時間は誰にも負けなかった
 運動会はリレーの選手 一〇メートル先の相手も抜いた
 運動会の寿司やお弁当が美味しかった
 父もその日だけはにこにこしていた
 樺太庁吏員の娘、担任のH先生が結婚で辞めた
 後任はS先生 靴音だけで起立! 教室はシーンとなる
 たとえ前日欠席しても宿題をやってこなければ
 鬼のように怒鳴られる 成績は見違えるように向上!
 …S先生は終戦のとき、女性をかばってソ連兵に殺された
 豊原中学を受けるため毎日補習
 合格者は四人に一人 苦手な理科は全部できた
 国語は分からない漢字が一つだけ
 算術は最後の五分で閃いた
 発表の日、O先生が雪まみれになって家に転がりこみ
 「合格しましたよ!」 今でも強烈に憶いだせる
 八百人中三位合格 C組の級長となる
 小学校も優等卒業 陸上競技で全島二位
 この年の七月七日、北支盧溝橋の銃弾一発で
 昭和二〇年八月十五日迄の長い戦争に突入した
 柔道はいつも投げられていたが面白くて
 放課後練習に励む
 中二で一級、中三の秋に初段を戴き
 師範学校で三段 軍隊で四段へ昇段
 夢の中でも試合した 
 夢で覚えた技を試した
 陸上競技、スキー、国防競技の本校選手
 東京まで四泊五日の車中泊
 明治神宮国民体育大会に二度出場
 二年目は全国代表四位内に入り
 国立競技場で皇太子の臨席を仰ぎ決勝に出た
 ユニフォームの左腕に白熊のマーク
 その上に「カラフト」と縫い取りがあった
 幼稚園くらいの子が「樺太って白熊がいるの?」
 姉らしい女学生が走り寄って
 「ぼうや、その人たちとお話しても言葉が通じないのよ
  アイヌ人なんだから」
 認識のなさに愕然とした
 土のう運搬リレー二位、手榴弾投擲突撃競技三位
 旭川師団長鯉登行一中将より賞状を戴いた
 勉強部屋に飾った 学籍簿 通知箋…
 樺太には家も 母校も 何一つ残っていない
 私の歴史は残っていない
 中学卒業の三カ月前、父が心臓病で倒れた
 進学すべきか、家業に従事すべきか
 父は樺太古物組合の長 三〇人を雇っていた
 父に無断で印鑑を持ち出し
 満州の哈爾濱医大奉天工科大、仙台高等工業、
 三つとも無試験推薦で合格した
 学校から報告…父は驚いたが、すべて断った
 樺太師範へ入学する手続きを依頼した
 私の青春の夢は潰れてしまった
 父が嫌になった 家を離れたい
 十七歳の二度と来ない時代に 私はこの考えを持った

*

海岸線  (特攻)

 わたしもおまえも、ふたたびみたび、
 いくたびもいくたびも、緑濃くにおう夏の日に、
 生まれて死に、死んで生まれるのだ。
 ~萩原貢「残響―赤岩にて」『悪い夏』(黄土社 一九六九年)

 貴様 と 俺 …軍隊ではそう呼ぶ
 遺伝子に縫われた争いのために
 無数の俺と貴様の徴証を葬る
 敬意をこめて 耳ではなく目の核で
 醒めることでは解決しない
 指令を晴らすために 空気と雰囲気を裂く
 いずれにも死者がたちこめている
 四〇〇万年の起点を背に
 枝分かれ縫合する 巡る暗号の自転
 血を分けた水の先端 舌ではなく手で
 摑めない事変との接線をたぐる
 同期生全員でボイコット計画
 樺太師範はまるで農業専門学校 
 放課後は毎日畑仕事 芋、大根、キャベツ…
 学生らしい時間をください!
 要求が通るまで、答案は白紙で出す
 隔日でスポーツと自由の時間が与えられた
 アッツ島守備隊山崎大佐以下全員玉砕の報
 軍事教官が幅を利かせていた
 寮で各室長を集めた 次の雪戦会で
 O教官を氷の上に叩きつけよう
 俺達の作った作物を俺達には食べさせず
 ピンハネをし、あまつさえ俺達を
 虫か何かの様に扱って省みない軍人があるか
 天の制裁を与えるのだ
 彼は日本刀を持っている 抜いたらどうする
 責任は俺がとる 退学になってもいい
 雪戦会終了と同時にO教官を全員で胴上げし
 合図で氷の上に叩き落とした
 樺太連隊情報局長のF大佐に呼ばれた
 正直に話す 不思議と何のお咎めもなく
 二週間休んだ後、O教官の態度は一変した
 徴兵年齢が一歳下がり 全員検査を受けた
 学徒出陣の風 広島文理科大を諦め
 海軍予備学生合格の通知 将来は決まった
 この戦争に命を捧げるのだ
 死によって、家族は幾分でも助かるだろう
 俺達の世代の働きで日本を救うのだ
 最後の樺太神社祭を見に
 西一条高橋洋品店前を歩いていると
 俺の家をきいている師範の女生徒がいた
 行くのかな… いなければ可哀そうだ
 家へ戻りしばらくすると彼女が来た
 おずおずと千人針をくれた
 その後、出征の祝賀会と
 出発前にも一度だけ人目を忍んで逢ったけれど
 俄か雨でいそいで訣れた
 連絡船に乗ってからあけてくれと
 小さな包みをくれた
 九月十九日、繰り上げ卒業式
 戦時下の決意を込めて答辞を読み上げた
 校長は泣いておられた
 この時代に生まれてきたのが不幸だった
 軍隊に行けば、帰ることはない
 早く二〇歳になりたいと思っていたが
 二〇歳とは、こんなものだった
 九月二〇日、豊原駅で旅行者になりすまし
 ひそかに樺太を離れた 潔く散華しよう
 目の前を通り抜ける灌木の林 白樺の樹々 
 鈴谷平野 鈴谷岳 この目に焼きつけておこう
 連絡船に乗ってから包みをあけた
 錦織の御守りと黒髪が入っていた
 妻にするなら彼女だ 生きて帰れたら… 
 彼女の父に手紙を書いた
 未練を残さず立派に死にたくて
 二、三度しか手紙は書けなかった
 軍隊はすっかり人生観を変えた
 内地人のずるさからいろいろ学ばせてもらった
 身を現人神に捧げ南溟北漠の地に散らさん
 九月二十六日、土浦海軍航空隊に入隊
 全国より約千二百名の学徒が集う
 東大、京大、北大、早大、各大学高専の秀才たち
 軍人とは名ばかりですぐに飢えた集団と化した
 人間性は認められず 娑婆っ気を抜け!
 少しでも弛んでいると 総員ビンタ 飯抜き 軍人講話… 
 短期間で日本海軍の将校を作るのだから
 無理もないが、随分ひどい仕打ちだった
 三カ月後、適性検査で三百人が飛行機へ
 九百人は陸戦隊や潜水艦へ配属
 一人一人が日本を変えたかもしれないほどの
 優秀な戦友たちが蟻のごとく死地へ送りこまれた
 五月二十七日、海軍記念日 神龍特別攻撃隊編入された
 敗戦が近づいていた 飛ぶにも飛行機がない 
 グライダー特攻訓練 三里ヶ浜の熱い砂を踏みしめ
 本土決戦に備え あと何日かで出撃
 八月十五日、終戦 部隊長が自決した
 これからどうすればいいのか
 帰るべき故郷もなく、青森へ復員した

*

海岸線  (漂着)

 おおうー おおうー 確かに生きた応答だ 
 地下千万の深さで 埋沈する地霊の抵抗
 すでに巨大な火だるまだ 拒否と闘争の熱さで
 燃えさかる焔 水の巡りが灼熱する
 急がねばならない 伝達のように
 ~渡辺宗子「雪だるまの地平線」
  「フラジャイル」第一〇号(二〇二一年一月)

 果てしなく  壁    を展げる血の流しあい
 国どうしが  海岸線  を脅かす時代が過ぎ
   大勢の  楯    を殺傷する兵器の技術が
             高度経済成長とクルマ社会を支え
        ドライブ  は余暇の娯楽  
 空も海も軍のエンジンの叫びに満ちていた
 国籍不明の潜水艦が疎開船を雷撃し
 海に投げ出された避難民へ機銃掃射
 小笠原丸のわずかな生存者が
 夥しい遺体や持ち主のない荷物とともに
 増毛町大別刈村に流れ着いた
 第二号新興丸も、泰東丸もやられた
 どこの潜水艦かは容易に検討がつく
 調査で明るみになっても否定するだろう
 わが軍も過去にしたことを
 していないと言うだろうか
 どの国も… 人の集まりは過去を捻じ曲げる
 真実を変えなくても見方を変える
 たった一人がそうするのも何度も見てきた
 ここには真実を書きたい
 両親弟妹が樺太にまだいた
 青森県横内村 叔母の家 居心地は悪い
 叔母はいらいらしていた 息子が千島から帰ってこない
 そのうち戦死の公報が入った
 私は復員したのに、従兄弟は死んだ
 叔母は線香を焚いて狂ったように泣く
 彼の嫁さんも可哀そうだった
 師範を出ているのだから先生になれと
 校長から呼び出しがかかり 筒井小学校代用教員発令
 青森師範の附属校 六年生を受け持つ
 一学級八十五人、足の踏み場もない
 青森空襲で焼け出された他校の子たちも入っていた
 学籍簿もなく 誰が誰かもわからず
 まずは教科書作りから 夜遅くまでガリ版印刷
 茶碗も箸もない宿直室で暮らす
 他に服がないので軍服で教壇に立っていた
 小学校の向かいに青森五連隊の兵舎があった
 そこに米軍が進駐してきた
 ある日、若いMPがやってきた
 校長があわてて通訳してくれという
 「なぜ海軍のオフィサーが学校にいるのか?
  この学校では軍事教練をしているのか?」
 「復員して教壇に立っているのだ。
  軍事教練などしていない。」
 「隣の部屋にある木銃は何に使うのだ?」
 「焚きつけにして燃やしている。」
 「きみはトウジョウの部下だったのか?」
 「私は学徒出陣で軍隊にかり出された。
  東条は陸軍、私は海軍予備学生で少尉だった。」
 「私もスチューデント・ソルジャーだ。
  夜、遊びに行ってもいいか?」
 MPのグループが宿直室へ来るようになった
 私があげるものは日本語だけで
 彼らは煙草、缶詰、チョコレートをくれた
 砂川の一心町から、突然便りが届いた
 よかった、生きていたのか… 
 北海道へ行こう 札幌一条中学に空きがある… 
 しかし出発の直前、父母弟妹が樺太から引き揚げてきた
 青森駅で久しぶりに家族と再会
 妹が私にすがりついて泣く 
 父も泣いていた 父の泣く姿を初めて見た
 皆を横内の叔母の家に連れて行き
 海軍の退職金一万円を父に渡した
 父は堤町でリンゴ商人をはじめた
 進駐軍が去り教員住宅となった第五連隊兵舎で
 妻を迎える決意をした 
 砂川駅で再会 身一つで青森へ嫁ぐと言ってくれた
 家族だけで祝言をあげた
 やがて父と訣れ 津軽海峡 白い海岸線 
 太った鳥の群れに覆われていた
 砂川 豊沼 歌志内 神威 南幌晩翠 月形 栗沢宮村 
 再び歌志内 南幌… 柔道、陸上 教員であり続けた
 自衛隊から何度も誘われたが 飛行機に乗りたくはないし
 戦友の顔が浮かんで断った
 昭和五〇年一〇月、正八位に叙するとの位階
 国の方針を何の疑問も持たず信じて裏切られ
 わけのわからぬままに主義の転換 騙されたふりをして
 私たちの空洞の夢にあからさまな奥底を焼く 
 古い儀式の根本を再び試そうとする
 匿された漂着 言葉の辺縁系 焦げた鏡 
 目を合わせると消えてしまう!
 渦状の恐怖が煽る 狂気とは呼ばれなくなった 
 結晶させる 新しい普通を命がけで讃える
 生きている時代に 象徴の綾へ発せられた波動の天秤
 決して鎮まることはない

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■「メディアあさひかわ」2022年6月号140ページに、旭川の詩誌「フラジャイル」第14号のこと

■「メディアあさひかわ」2022年6月号140ページに、旭川の詩誌「フラジャイル」第14号のこと、表紙の写真とともに、大きくご紹介戴いております。
 昨年12月に旭川市中央図書館で開催されました小熊秀雄生誕120年記念講演「小熊秀雄への応答~現代への影響と将来への展望」(特別講師・吉増剛造)のこと、「いまだ文章化できない旭川の秘密」や「無意識よりももっと深い淵がある」という詩の本質についてのお話、吉増剛造先生が昭和53年に発表された詩篇旭川は鉄器の味がした」のこと。谷口雅彦氏の表紙とエッセイ「生まれた春光の町と緑町の光と影の家と最初の写真を撮った日のこと」、ゲスト寄稿の葉山美玖さんの詩篇「公園」、フラジャイル新体制について等、丁寧にご紹介を戴いております。地元誌の熱き応援に心より感謝申し上げます。
 詩誌「フラジャイル」は札幌の書肆吉成さん、旭川ジュンク堂書店旭川店、コーチャンフォー旭川、こども冨貴堂さん等でお取り扱い戴いております☆(ジュンク堂さんは14号は売り切れのようです。恐縮です。誠にありがとうございます。)

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■ 「 スプーン 」    柴田望

「 スプーン 」    柴田望
*

 枝分かれして高速へ続く
 国道トンネルの周辺にゴミが散らばる
 缶やペットボトルが中の液ごと
 見たこともない形状に醜く潰れている
 荒れた粒子を纏う
 宇宙から見たら日本はどんな姿か?
 数年前の菓子や弁当やレジ袋
 ステンレスの捻じれたスプーンが
 死体のように転がっている
 薬莢のごとく吸い殻が散る
 まるで戦場…
 世代の苦しみを映す現代アート
 再利用できないか?
 アスファルトだけではなく
 草木を蝕むプラスチックを
 火ばさみで摘む
 少し歩くと袋は命を帯びて胎動し
 決壊への意志は育つ
 収集運搬を経て、最終処分場へ埋葬される
 誰がこんなに捨てるのか? 
 神をも恐れぬハラスメントの隠蔽のごとく
 法に触れても謝罪しない
 環境を傷つけることができるなら
 心や命を壊せる (心と魂は違う)
 被害者であり、加害者である
 予算に応じて整備されていく
 縁石に錆や思惟が附着している
 匿名の靴や、動物の遺骸や、事故の破片や
 女性の下着も落ちている
 どんな目に遭ったのか?
 公共の足元に、自転車で猛進する傘の画が
 無音の叫びのように沁みる
 雪が融けると公けになる
 道路は街の血管だから
 血は汚れているのだろうか?
 浄めることはできないか?
 見て見ぬふりの犬の散歩や走る気配とすれ違い
 (生きている人だろうか…)
 トンネルの反響や影に脅えて
 日曜朝、たった一人で
 勝ち目はない、権力も支援もない
 泥沼を牛乳ひと匙で漂白する作戦
 ビニールに雨汗が落ちる
 拾っている私の姿が見える日は
 誰も捨てない…
 無心でやると、感謝されたり
 手伝ってくれる人が訪れ
 波動の潮目(チャンネル)が変わった…
 言葉より行動が効果的だ
 ワクチンか何かに応用できないか?
 あの鯨の胃袋を連想させるほどの
 ゴミは減っているようだ
 拾うのに夢中で
 頭を轢かれて私は死んだ
 歩道に白い祭壇…
 ペットボトルと花束が供えられている
 やめてくれ、ゴミが増える
 パトカーが巡礼している
 トラックがタバコを飛ばして小さくなる
 スプーンの捻じれが進化の過程で
 その時間を掬う

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■ 本日5月17日(火)旭川ケーブルテレビさんにて、お昼12時からの「ポテトにこんにちわ!」に出演させて戴きました。

■ 本日5月17日(火)旭川ケーブルテレビさんにて、お昼12時からの「ポテトにこんにちわ!」に出演させて戴きました。MCは泉百華さんでした。オンエア前に岩見沢のお話などで盛り上がり、大変楽しい時間を過ごさせて戴きました。貴重な機会を戴き、心より感謝申し上げます。

番組名:ポテトにこんにちは!
放送時間:12:00〜12:30(再放送は20:30〜21:00/24:00〜など)
放送チャンネル:ポテト11ch(弊社加入者およそ2万4千世帯が視聴可能)

☆5月14日(土)の小熊秀雄賞贈呈式会場で購入した、小樽の「ジーンズショップ・ロッキ」さん特製!の小熊秀雄Tシャツを着て出演させて戴きました。オーナー平山秀朋さんの記念講演、素晴らしいお話でした。番組の中でもご紹介させて戴きました。

MC泉さんよりご質問戴いたインタビュー内容はだいたい次の項目でした。概要をメモ的に記します。

① 詩に興味を持った経緯について
② 旭川出身で活躍している詩人について
③ これまで出版した詩集と北海道詩人協会賞について
④ 令和3年度旭川市文化奨励賞の受賞について
⑤ 詩誌「フラジャイル」の創刊について
⑥ 詩誌「フラジャイル」第14号の魅力について
⑦ 視聴者へのメッセージ

① 柴田は音楽活動から文学に興味を持ちはじめたこと、例えばボブ・ディランは、ランボーヴェルレーヌに影響を受けたり、ギンズバーグらと交流したり、引き籠って聖書を読んでいた時期もあり、音楽を理解するには、詩の文学を学ばなければならないと思ったこと。旭川大学で、山内亮史先生は尾崎豊中島みゆきを文学、社会学の視点から研究されていた。高野斗志美生の哲学や文章構成法の講義の中でバンド演奏をした。

② 旭川出身で活躍している詩人について
 今年の第55回小熊秀雄賞を受賞された津川エリコさんは旭川東高で佐藤喜一氏から学ばれた。「鷹栖叙事詩」を創ったTOLTAの山田亮太さん(第50回小熊賞受賞者)や旭川の高校に通われた詩人・文芸評論家の岡和田晃さんの全国的な活躍。「フラジャイル」同人の吉田圭佑さん(旭川東高2年のとき第50回有島青少年文芸賞を詩で受賞)とはトークイベントを企画中。

③ これまで出版した柴田の詩集について…黒本』は日曜文芸に入選した作品を中心にまとめたもの。当時若宮明彦先生の選にて、「フラジャイル」同人の天才的な詩人・小篠真琴さんや、13日に逝去された旭川の大切な詩人・佐々木虎力さん(龍谷の先生を長年勤められた)も、日曜文芸に入選していました。『顔』『壁/楯/ドライブ/海岸線』などAmazonで販売されています。第57回道詩人協会賞を戴いた『顔』、読み手によって様々な顔を感じて戴いた。コロナで延期されていた贈呈式が15日(日)に行われ、YouTubeでそのときの朗読の様子を公開していること。
 https://youtu.be/xfqUJHFGZz0

④ 令和3年度旭川市文化奨励賞の受賞について
 11月3日贈呈式の写真。記念講演で、小熊秀雄、今野大力、鈴木政輝など、昨年上演された「旭川歴史市民劇 ザ・ゴールデンエイジ」に登場する伝説的な詩人たちの流れを汲む、旭川の詩の先達が《心の拠り所》を創る、心を大切にする文化を築いてきたことをお話させて戴きました。

⑤ 2017年12月2日、「青芽」の富田正一さんから後継誌を発行するように励まされ創刊。創成メンバーの二宮清隆さん、木暮純さん、山内真名さん…先輩詩人に支えられ、記念イベントには長屋のり子さん、村田譲さんにもご出演戴いたこと。関連のイベント紹介の中で、木田澄子さん、金石稔さんにもご参加戴いた2018年9月のジュンク堂書店旭川店での朗読会のこと。昨年10月24日にはオンライン開催のコトバスラムジャパン北海道大会を主催させて戴いたこと。
 来月6月17日(金)に鷹栖図書室で18時より開催の朗読会『夜のお話し会』のご案内をさせて戴きました。「フラジャイル」同人が自作詩の朗読と、「詩とは何か」というお話を少しずつさせて戴きます。ご興味お持ちの方、ぜひご来場戴けましたら幸いです。

⑥ 「フラジャイル」14号の魅力について
 昨年12月12日に吉増剛造先生を特別講師にお招きした、旭川中央図書館での講演会(小熊秀雄生誕120年記念講演)を収録。文章化できない「旭川」の文化の魅力について、(河原館、星野由美子、塔崎健二、砂澤ビッキ、イクパスイ…)、吉増先生から時空を超えて詩の扉を開くような貴重なお話を戴きました。
 また、旭川出身の写真家・メディアプロデューサーの谷口雅彦さんの写真を表紙に。谷口さんからはエッセイのご寄稿も戴きました。

 ☆6月6~12日の1週間、旭川市内の「ギャラリーカワバタ」さんで開催される谷口雅彦さんの展覧会「まさひこ君と写真家谷口雅彦」展Ⅰのご案内をさせて戴きました。

⑦ 最後にメッセージとして…
 かつて旭川は詩の街として、全国的にも有名でした。「大雪山系詩人連峰」みたいな、山にたとえられていたほどの盛り上がり(笑)でした。今は大変複雑な時代ですが、《心》を大切にする文化の街、詩の街としての誇りを取り戻せるような、若い世代の方たちが、本物の活動をできる、才能を伸ばせるような自由な創作・表現の場を創っていきたいと考えております。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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■本日5月17日(火)、お昼12時より、旭川ケーブルテレビの『ポテトにこんにちは!』に出演致します!

■本日5月17日(火)、お昼12時より、旭川ケーブルテレビの『ポテトにこんにちは!』に出演致します!
 詩誌「フラジャイル」のことや旭川の詩文化について等、お話をさせて戴きます。ぜひご覧頂けましたら幸いです。

・番組名『ポテトにこんにちは!』
・放送時間:12:00〜12:30(再放送は20:30〜21:00/24:00〜)
放送チャンネル:ポテト11ch(弊社加入者およそ2万4千世帯が視聴可能)

・写真は先日発売された月刊『北海経済』6月号です。
 詩誌「フラジャイル」第14号について、写真家・メディアプロデューサーの谷口雅彦さんによる表紙のお写真とエッセイ、昨年12月12日に旭川市中央図書館にて、特別講師に吉増剛造先生をお招きした「小熊秀雄生誕120年」の講演のこと、葉山美玖さんのゲスト寄稿のことなどご紹介戴いております。誠にありがとうございます。

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■第55回小熊秀雄賞贈呈式 受賞作 津川エリコさん 『雨の合間』(デザインエッグ)

http://blog.livedoor.jp/ogumahideo/archives/52173921.html
■第55回小熊秀雄賞贈呈式

受賞作 津川エリコさん 『雨の合間』(デザインエッグ)
 ※アイルランド・ダブリンよりオンライン参加

 日時 2022年5月14日(土)午後3時から
 会場 アートホテル旭川旭川市7条通6丁目)

 記念講演 平山秀朋さん(小樽在住)
 演題 『小熊秀雄をめぐる文学的営為~旭川椎名町、小樽~』
  HBC社員だった平山さんの父親の遺品の中から、小熊の妻・つね子の肉声テープが見つかった。つね子が語る、夫・小熊秀雄の実像とは…。

 参加費 500円(会員外700円)

■贈呈式の後、コロナ対策をしっかり取って懇親会を開きます。軽いアルコールと軽食を用意します。参加費は2500円。ぜひ、ご参加ください。
 ※新型コロナウイルス感染防止のため、発熱等体調がすぐれない時にはご参加をお控えください。ご参加される場合は、必ずマスクをご着用ください。(小熊秀雄賞市民実行委員会ブログより)

■『雨の合間』、「雨」とは何か。詩は読む人によって、読む時代や場所によっても、言葉の意味や彩りが変わります。
 いま、世界ではあらゆる言語による、戦争に勝つことを目的とした兵器としての、さまざまな言語による情報の「雨」が、絶え間なく、ウクライナでは砲弾、ミサイルの「雨」が人々を、街を、襲っています。その「雨」がいっとき止んで、太陽が差す「合間」には、一体何が起こるのでしょうか。
 「ナメクジとカタツムリもお使いに行こうと」 「雨の合間を待っていて濡れそぼった/繁みから這い出てきた…」こう書いてますよね。 雨が止むのを、じっと待っていた小さな命が「濡れそぼった繁みから這い出てくる」。土の中から芽が出てくるような小さな命が動き出す。雨の合間の沈黙は決して無音ではなく、そんな微かな命の、希望の音に、耳を傾けるときです。
 小さな命が草むらから道路に出て、自転車に踏みつぶされ、「黒いダリアの押し花みたい」に「微かなスジの細部」をあらわす。小さな死が美しく表現されています。雨の合間の沈黙のときは、死を見つめるときでもあります。
 詩の想像力が、時間を止めて、『雨の合間』の沈黙の中で、死んでいった人たちの声に耳を傾ける。いま、多くの方が戦争で亡くなっています。そして新聞やテレビで報道される大きな声だけではなく、その陰で小さな虫の死のように、公の場では注目されない、幽かな声、微かな命の動きに届く。この詩集に収められている、「ページをめくる人」、「こんなにも濃い青」、「十月の風」など、他にも忘れられない作品がたくさんありますが、まさにそうした「沈黙に耳を傾ける」、人類の辛い時代に、文学の無限の想像力をもって向き合い、詩の力が、希望へ導いてくれる作品として鑑賞致しました。
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 今夜もまた眠られずにいる者の目を覚まさせ続け
 嘆きの歌で動揺させ何度も寝返りを打たせよう

 冷たい星を闇の中でさらに光らせ
 落ちて来る光を夜明けまでに貪り食らおう

 私の母は誰なのかとは訊かないで
 彼女はただもう冬の匂いに過ぎないのだから

 かつてないこの夜をむしろ眠らずにいたい
 闇を抱えて冷たい石を飛び越えながら

 岸辺に沿って次から次へ
 鉄色の水にさざ波たてて   
          (「十月の風」『雨の合間』)

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