詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■木内ゆか詩集『カミ族の子ども』『雪割りの邑』(製作・㈲共育舎 2020年12月10日)

■木内ゆか詩集『カミ族の子ども』『雪割りの邑』(製作・㈲共育舎 2020年12月10日)、御出版、おめでとうございます!!
 こだわり抜かれた紙の感触。それは「草の上でじっとしてる」(「佳い人になりたいな」)佳い人との出会いの感触のような、または「五十年したら 私たちは/全員土だ」「心が芽吹く 深く根を張る」(「土」)土の感触のような…私の腕の産毛と地球子の草、詩想を運ぶ荷札(美術作品)、海流、「あの日の電車」(「ソウルトレイン相鉄線」)。切ない明るさのユーモア、言語によって変形される現実、人格を与えられた、人の形をしていないものたちに与えられた感情の気象、遺伝子が辿る螺旋、役割の既定路線を生きる必要はないと安心させてくれる。現代の言葉で紡がれた神話的伝承の「雪割りの邑(むら」。「フラジャイル」10号初出の「ねこ神社」は人々の抱く幻想のずれに潜む。当然に継承される聞いたこともない古(いにしえ)の習慣。地図上は不明で、初めて訪れるのに懐かしいと感じる。「光ファイバーふるわせて/キラキラ 心にふってくる/その紺碧の言の葉が/「ナンダカ懐かしいのです…」(「海から降る雪」)、石狩湾、蘭島海岸、曲線がイメージを豊かに喚起する著者による挿絵も魅力的。ポストカードの付録も嬉しく、ありがとうございます。部屋に飾ります。アンダンテで走り書きされ、時に立ち止まり、アレグロの速さで紡ぎ出されたガリ版印刷的に浮かぶ文字たち。血球のごとく、海に降る雪のように私たちに運ばれる、木内さんの世界☆

f:id:loureeds:20210110080935j:plain

f:id:loureeds:20210110080956j:plain

f:id:loureeds:20210110081022j:plain




■詩誌「時刻表」第8号(2020年11月20日 「時刻表」舎 編集発行:たかとう匡子氏)

■山本眞弓さんより詩誌「時刻表」第8号(2020年11月20日 「時刻表」舎 編集発行:たかとう匡子氏)を昨年末にお送り戴いておりました。心より感謝申し上げます。
 山本眞弓さんの詩篇「水風船」、「禍」のつく不安な時代におけるシュールレアリズムの夢、衝撃的な第一連「ヨーヨー釣りの水風船か/針で一突きすれば/どっと水が流れ出し/どろどろの血の塊やら臓物も/よれよれの薄皮に/砕けたさんごの欠片」。夢は次の場面、第二連「なだらかな平野」「見知らぬ国の田園」や丘を越え、細い透明な体のアマビエに遭遇。第三連で目が覚めると水鉢の目高が死んでいる。「たぽんたぽん」と浮き沈む「水風船」は目高の、アマビエの眼だろうか。「舞い上がれない 沈まない」の一行が不安を揺さぶる。
 倉橋健一氏「気むずかしい夢」も時代の不安が夢に反映されているよう。「だが波紋字体は所詮は物象に過ぎないのだから」(「気むずかしい夢」)、世界を覆う「禍」のカーテンは根源の核を写しているに過ぎない。夢に導かれ辿り着く、人の「本性」に関わる秘密。「戦争という名辞を虐殺、陵辱、略奪の三要素に分解してしまった/とある詩人の奇抜な発想に心底翻弄されてしまった(ことがあった)/詩人はそう分解することで/人類は生成の最初の段階から本性に戦争を持っていた/と警告する/なるほどそうだとヒロシマナガサキアウシュヴィッツも/単純に時代の生み出した惨劇とはいいにくくなる」。『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を読むと、他の種族を滅亡させた、夢を見る=フィクションを信じる才能を持つ私たちホモ・サピエンスが「生物の歴史上、最も危険な種」であることが分かる。戦争は形を変えて続いている。田中健太郎さんによる批評「縄文を生きた人々との対話」、「縄文時代から現代までの年月を十度繰り返す。」壮大な高橋次夫詩集『祷りへの旅』論を拝読しながら、詩の言葉によって再構築される、人類の歩んできた危機の歴史について、深く考えさせられました。

f:id:loureeds:20210109234545j:plain

■みつべえさん(よねたみつひろさん)の個人誌「卵Ⅳ」(2020年12月20日)

■みつべえさん(よねたみつひろさん)より、個人誌「卵Ⅳ」(2020年12月20日)を年末に戴いておりました。誠にありがとうございます。表紙をめくると「寒いね。そうだ、熱燗のもう。乾杯。」とあります。同感です。しかしオンラインでやるしかない状況ではあります。
 全体の半分以上のページが「ツイッター不要不急ログ」。6月1から8月2までの詩人の日常。コロナ禍の行動と思考の記録。久しぶりに急いでhttps://twitter.com/poetarot を拝見します。お元気でしょうか。
 詩篇「■あいふぉん」、多くの人が一日のうち多くの時間向き合っているスマートフォンは登場しません。会話というか一人語り。もしかしてこれは非常にリアルな、人類と人工知能との関係なのかな、と想像すると、ぞっとしました。人類は手懐けられているようです。「あのさ/雨やまないの/あんたのせいじゃない/謝らないで/穴に入らないで/あれから百年ふってるけど/愛してるの/青ざめたでしょ いま」(「■あいふぉん」)。

f:id:loureeds:20210109230553j:plain

■詩誌「无」(第二十九号 荒平太和氏 草木社)

■福岡の荒平太和さんより、詩誌「无」(第二十九号 草木社)をお送り戴きました。誠にありがとうございます。
 「无」=「ん」とお読みするそうで、日本語では「無」( 何もないこと。存在しないこと。哲学用語)と同じような意味ですが、中国語では「番号」を表すということが分かりました。異国情緒漂う、不思議な文字。
 須賀大陸氏の詩篇「天竺」、「熱砂と強風と虚無」の壮大な旅路、「色即是空」という言葉について。経典を、宗教の教えを求めて人類が歩んだ道。かつて井上靖によって小説『天平の甍』が書かれ、1980年に中国ロケ戦後一番乗りの映画となり、大ヒットしましたが、今はそのような映画が作られることはなく、忘れられている。
 荒平太和さんの詩篇「其れ」。「宗教に一番近い位置にあって/科学からは一番遠い処にいて文学とは仲良しで」…「其れ」とは何か? 科学のふりをして、今まさに報道によって行われている情報操作は、迷信的であり、魔術的であるかもしれない。
 宮崎の前衛画家・瑛九と妻谷口都の結婚について(「瑛九夫人ー谷口都ー3」)、戦後の生活、エスペラントの記述もあり、興味深く拝読させて戴きました。心より感謝申し上げます。

f:id:loureeds:20210109223348j:plain

■河野俊一さんの発行される「御貴洛」(2021.1 2020年度3学期 Vol.36)

■河野俊一さんの発行される「御貴洛」(2021.1 2020年度3学期 Vol.36)を拝受致しました。誠にありがとうございます。
 昨年の11月、「コロナの死者よりも多い自殺者数に海外メディアが驚愕。日本の「メンタルヘルスパンデミック」」というニュースがネットに流れました。
 新型コロナウイルス感染症そのものよりも、はるかに多くの日本人が自殺によって亡くなっている。昨年は1万7000人以上。今回の「御貴洛」に収録された詩篇「そこには」「影」の二篇を拝読し、現代の自殺について深く考えさせられました。
 「はじめは/身元が分かった人の/足し算であったが/しばらくたってからは/この人がいない/の積み重ねの/引き算になった」(「そこには」)。行方不明者の集計が日常化される恐ろしさ。計算に加えられる、除外される命の名前。「そこ」とはどこか。その場所に確かにいたのか。いまは空白なのか。
 「そこにも/ここにも/いちどきにふた方向へと/影はその意識さえをも/色濃く匂わせるのだった/そんなにも濃くたくましいのであれば/通りのこちら側だって/隣の町だって遠い異国だって/近しいはずだ」匂いや距離の感覚は脳が知覚する。脳は夢と現実を区別できない。脳は騙される。人間の行動は幻想に導かれる。行動を自死へ導く条件が重なったと判断されるほどの幻想が脳を満たす時間は長いのか、短いのだろうか。近くて遠い「あの世に旅立ったあの人の影」。もう一人の自分に出会うことが創作の営みであれば、自死から逃れる条件を顕在意識と潜在意識の両方の自分から得ることができるだろうか。
 ガーシュウィンの「サマータイム」の論考。ジャズ・スタンダードとして、大学時代よく演奏しました。救いのない状況下で歌われるからこそ、美しい夢の世界。冒頭の詩「ダナン」も子守唄のように聴こえてきました。「陰はあふれていて/日なたもあふれていて」…揺り籠のように。厳しい時代でも温かい甘い夢を年初に。心より感謝申し上げます!!

f:id:loureeds:20210109205131j:plain

■石川逸子氏の発行される「風のたより」(第21号不定期刊 2021.1.1)

■今年最初に届いた詩誌です。石川逸子氏の発行される「風のたより」(第21号不定期刊 2021.1.1)を、富田正一さんよりお送り戴きました。誠に、ありがとうございます。
 冒頭に、昨年、詩集『神歌(ティルル)とさえずり』(七月堂)を上梓された宮内喜美子氏の作品「神歌(ティルル)とさえずりー久高島ー」を冒頭に。聖地「御嶽」に溢れる神歌、温かい風を新年に。
 5ページより、富田正一さんの詩集『老春のプロムナード』(青い芽文芸社)より三篇、「菊と刀」、「尋ね人」、「老春のプロムナード」が掲載されている。「尋ね人」は富田さんが十八歳の陸軍少年兵で加世田市飛行場に駐屯していたときにお世話になった鹿児島の民家の方から、四〇年後に連絡をもらったときの実話。特攻の訓練も、憲兵の取り締まりも、戦争の時代は実はついこの間のこと。
 元三菱徴用工韓国被爆者問題についての「重い扉はなぜ開いたか」、硫黄島で帰らぬ人となった静岡県出身鈴木次郎少尉のことを書かれた石川逸子氏の「布良埼神社からの縁」、興味深く拝読させて戴き、戦争の時代と現代との繫がりについて、深く考える機会を戴きました。

f:id:loureeds:20210109200902j:plain

f:id:loureeds:20210109201010j:plain



■いまから3年前、2017年の12月2日に、旭川の詩誌「フラジャイル」を創刊。《まちなかぶんか小屋》にて創刊記念朗読会を行いました。

f:id:loureeds:20201231192451j:image

■いまから3年前、2017年の12月2日に、旭川の詩誌「フラジャイル」を創刊。《まちなかぶんか小屋》にて創刊記念朗読会を行いました。雪の降る中、多くの市民の皆様に足をお運び戴きました。戦後72年続いた「青芽」主宰、富田正一さんからのご挨拶。「フラジャイル」創刊メンバーの二宮清隆さん(埼玉より!)、山内真名さん、木暮純さん、柴田望の朗読、初心表明。ゲストとして小樽から長屋のり子さん、恵庭から村田譲さんが応援に駆けつけてくださり、お二人のレベル高き素晴らしい朗読が旭川の夜に響きました(ぜひ、動画を御覧ください)。本当に盛り上がりました。買物公園のイルミネーションがとても綺麗で、たくさん写真を撮りました。「大舟」での打ち上げも忘れられず。街全体が温かい詩の灯で包まれるような、奇跡の魔法のような一夜でありました。
 当時の創刊号はA4・3枚のコピー用紙を中綴じしただけのものでした。あれから3年、名だたるゲストの皆様による御寄稿やイベント収録の機会を毎号戴き、貴重な勉強をさせて戴きました。年代も10代からと幅広く、同人も増え、今月発行の3周年記念号は80ページの無線綴じ製本。フラジャイルより第1号の詩集、二宮清隆さんの『海へ』も発行することができました(この詩集に収録の詩作品「夢を眠らせに」(32ページ)、2017年12月2日の創刊記念朗読会のことが二宮さんによって刻まれています)。多くの方の温かい御支援、御協力を賜り、まずは10号まで続けることができました。3年間という器何千杯分もの、言い尽くせないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。誠に、ありがとうございます。
 2017年12月2日という日付を一生忘れることはなく、これからも大切にしていきたいと思います。2020年は、3年前には想像できなかったような苦しい状況下ではありましたが、文学の想像力の無限性が確認されますことを信じ、意図的に整理された情報の繰り返される奔流に操作されることなく、伝達の技法を芸術とし、多様な角度の視点や感性からの表現を志す詩の活動に、また初心を忘れず取り組んで参る所存でございます。引き続き御指導、御鞭撻の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。


2020年12月 詩誌「フラジャイル」代表 柴田望

f:id:loureeds:20201231192252j:image
*

***以下は2017年12月当時の投稿です。***

■12月2日(土)18時より 旭川市7条通7丁目 まちなかぶんか小屋にて
詩誌『フラジャイル』創刊記念朗読会を実施致しました。
実現に向けてご協力戴いた皆様、励ましのお言葉を戴いた皆様、
当日会場へ足を運んで戴いた皆様、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
会場は満員の盛会となり、4名のフラジャイル創刊メンバー(柴田望 木暮純 二宮清隆 山内真名)の朗読、
そして特別ゲスト詩人、長屋のり子さん、村田譲さん、にも素晴しい朗読をして戴きました。
(ゲストお二人の朗読で会場熱気に輝き、暖かいイルミネーションの輝きに包まれました☆)
その模様は、翌日の北海道新聞にも大きく掲載を戴きました。
*
当日の様子の一部をyoutubeへ動画アップしております。
■詩誌『FRAGILE』創刊記念朗読会【柴田望】12月2日(土)まちなかぶんか小屋
「枷辞」「山の景色」~安部公房論(高野斗志美)について~「変形譚」

youtu.be


■詩誌『FRAGILE』創刊記念朗読会【木暮純】12月2日(土)まちなかぶんか小屋
「夜は眠れない」「口唇口蓋裂だった少女に」

youtu.be


■詩誌『FRAGILE』創刊記念朗読会 【二宮清隆】 12月2日(土)まちなかぶんか小屋
「こういうひとに」「雪虫」「くらぶかしゅ」

youtu.be


■詩誌『FRAGILE』創刊記念朗読会 ゲスト村田譲さん 12月2日(土)まちなかぶんか小屋
「十二月におこる数多の事象」

youtu.be


■詩誌『FRAGILE』創刊記念朗読会 ご挨拶 12月2日(土)まちなかぶんか小屋
『青芽』主宰・富田正一  『フラジャイル』代表・柴田望

youtu.be


*
創刊メンバーの一人、山内真名さんは「本と映像の日々13」「シャッターアイランド」を朗読、
特別ゲストの長屋のり子さんには、亡きお兄様の想い出が詰まった「五右衛門風呂」を朗読戴きました。とても可愛らしくて、素敵で、愛情のこもった朗読・・・
*
「フラジャイル」とは何か、よく宅配便など荷物に貼られている「こわれもの」のステッカー、
壊れやすく、貴重なものだから、大切に扱ってください、という表示から来ています。
こわれやすく、しかし、まだ壊れていない、果たして、それは何か?
人間の心か?平和のことか?地球、日本、北海道、旭川のことか?
解釈は読者にお任せしますし、今回参加した同人一人ひとりにとっての、
「フラジャイル」「こわれもの」というタイトルへの想いがあります。
戦後71年続いた詩誌『青芽』主宰・富田正一さんの、「旭川を再び詩の街にしたい」という想い
旭川の詩の歴史、詩を創作する心、それはとても貴重であり、大切に次の世代へ
運んでいかなければならない、使命を帯びて取り組んで参ります。
皆さんとお会いできた12月2日(土)この夜を忘れずに、
壊れやすく、しかし、まだ壊れていない。大切なものを運ぶ『フラジャイル』
たとえ何度壊れても立ち上がります。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
*
村田譲さんのHP「空への軌跡」・吟遊記・に掲載戴いております。誠にありがとうございます。

http://blog.livedoor.jp/gliding.../archives/51212100.html


*
2017年12月 詩誌『フラジャイル』主宰・柴田望

f:id:loureeds:20201231192230j:image

f:id:loureeds:20201231192241j:image

f:id:loureeds:20201231192312j:image

f:id:loureeds:20201231192354j:image

f:id:loureeds:20201231192417j:image

f:id:loureeds:20201231192440j:image

f:id:loureeds:20201231192500j:image